間に合わなかった声

「やれやれ、見つかってしまったか」



こうなる前に退散しようと思っていたのに。この女…時間稼ぎをしていたのかな。



ッ…



―――益々気に入ったよ



「テメェ…、誰の許可を得て此処にいる?」




元親はじっと、睨み付ける。此処は俺が沙羅にくれてやった俺達だけの場所だ。
そこに無断で来やがるたぁいい度胸してんじゃねぇか…ッ――

―――手合わせをしてから、沙羅の姿を探したが何処にも居なくて。夜中になり、流石に戻ってきただろうと思い部屋へ向かった時だ。ひとり、ひっそり外に出た彼女。不審に思い追い掛けて来たはいいが、途中霧で見失ってしまった。やっと抜けて来たそこには、見知らぬ男が彼女を担ぎ立ち去ろうという姿があったのだから。



「元親君、安心したまえ。
今は僕達二人だけだ。…彼女は豊臣が貰っていく」

「何だと…!?」



沙羅―――



「沙羅ッ!!…てめぇ…ッ…!!」



唇を噛む。




「ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞ…
そいつを返しやがれッッ!!」

「――…君とはまた会う事になるだろう。その時は君の兵も頂く。
――覚えておくといい」



豊臣の戦力として、ね



――パ




指を鳴らす音。
それと同時に



「なっ!?
――…ちいっ!!」



半兵衛の周りに風が巻き起こり、顔を腕で覆う。風魔の技。ヒュウヒュウ、と音が聴覚を占領する。収まると半兵衛と風魔、沙羅の姿は跡形もなく消えていた。



「―……沙羅!!
くそおおおお!!」



地面を力一杯殴り付けて。そんな事をしたって、時間が戻る訳でもない。
そんな事分かっている。だが、やり場のない悔しさはぶつける他、術を知らなかったのだ。




(――任せろと言っておきながら、



目の前で連れてかれちまった)





もっと早く来ていたら――…

元親は歯を噛み締める。
だが直ぐはっ、として。




…ッ――




空から舞い降りてきた1枚の紙。その封を開くと眉を吊り上げた。

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