秘密と衝撃

『―――私達が良家の生まれ…?』



唖然と呟いた。
宗定が語った自分達の小さき頃。
捨て子ではなく人から託された事。



『これを見ろ』



出てきたのは小太刀。
その鞘を抜くと鋭く光る刀身に小さく彫られた紋。



『…これは…』

『恐らく隠語だ』

『隠語…』



宗定がこれを見つめ



『それはお前を連れてきた方が持っていた。俺には読めない。
知る者にしか、同族にしか読めないような一種の隠語だろう』

『でも私にだって…読めないわ…』

『此処で生きてきたんだ…無理もない』



目を伏せて。



『俺は昔、ある軍にいた。様々な奴を見てきたが、』



お前達の力



『!』

『見た事ないものだ』

『……―――』



それを言われては返す言葉がなかった。



『珍妙な力…狙われる可能性も予想していた。
だが俺一人ではお前達2人は守れないだろう。だから、俺なりのやり方で護身術を教えてきた』

『……』



初めて知った。
確かに凄く賢いのは、一緒に暮らして分かっていた。
機転が利くし、村長にも任を頼まれた事がある。
本人は体の事もあり謙遜してそれを承けなかったが。
皆が、今まで宗定の策のお蔭で村が平穏なんだと言っていた。
今考えてみるとそんな機知な人が、この村に留まっているのはおかしかったのかもしれない。



『お前達はよくやった。
ここらへんじゃお前に敵う奴はいねぇ。けどな…』

『…』

『女だ、お前も…!!』



大の男何人もにかかりゃ限界がある



『それを分かっていて俺はお前達に頼り過ぎた…その結果がこれだ…。
大切な“家族”を守れなかった…』



本当に悔しそうに、苦しそうに
宗定は呟いた。
黙って見ている事しか出来なくて。



『――済まねぇ沙羅』

『どうして謝るの…』



今まで普通に暮らしてきた。
辛い事もあったけど楽しい事ばかりで。



『落ち着いて聞け、沙羅』



これがどうして落ち着いていられるの。
こんな事初めてで


どうしたらいいか分からない。



『俺は…』

『嫌…何も聞きたくないっ!!』



様々な事が重なって張り裂けそうな胸。
もう何も知りたくなかった。
だから外に向かって走った。
もう唯逃げたくて。



『沙羅ッ!!』



その後直ぐに聞こえた不自然な音。
ゴフリ、と溢れ落ちる音。



無意識の内に、足はピタリと止まっていた。
後ろを振り返る。



振り返った瞳に映った、それは。
口を押さえ床に縮こまる父の姿だった。


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