月華の契り

「―――…か、」




―――トッ…

胸板を叩く小さな拳。元親は目を見開く。




「馬鹿…っ、」




どうして

―――その言葉に困惑してただただ沙羅を見つめる元親。




分かってた





彼はこんなひと、とても




「沙羅…」




優しい人―――。

沙羅の手、元親の頬に触れて。




「そんな苦しそうな顔、」



そんな弱気な貴方
―――首を振る。



「似合わない」



笑って



「いつものように皆を引っ張る笑った貴方を見ていたいの、ずっと」




だから




ポタ―――…




「ずっと隣に居させて」




ずっと




「隣にいて」




ギュッ




「愛してる…っ、元親」



ずっと好きだったのにこの言葉
待たせて、ごめんなさい…っ―――

そう伝えて顔を埋めれば、彼が優しく笑って。優しく抱き締められて。



「…―――知ってんよ」



なんとなく気付いてた



だが



「そいつを聞いて、安心した」




ありがとよ、と言う声が心から愛しい。





「…もう一つ、」




望んでいいか

―――彼の指が私の髪を撫でて。頷いて見上げる。青い隻眼。綺麗な海の色。




「言って、元親」




―――月が満ちる。二人の揺らめく波間を照らして。元親の目が私の目を見つめる。




「お前を正室に迎えたい」





―――見開いた目から溢れて、零れて。




「側室なんざいらねぇ、俺には」




―――お前だけだ




「それでもお前は―――俺を選んでくれるか…?」




一生を共に過ごしてくれるか―――…?

肩が震えてしゃくりあげる。こんな泣いたのは叔父を亡くしたあの日以来。誰にも見せまいと隠してきた泣き腫れた目の中の彼はぼやけて。でも見つめ続けて。頷く。彼は笑って。首に腕を回せば「愛してる」と言って口付けが降りてくる。重なる唇、照らす月華。包み込むように抱かれて。



―――共に海へと沈んでいった。



20111217
20120903改

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