貴方へ

刹那頭の中を駆け巡る、時間。







『あなた…さっきのやつらの仲間ね』

『…――私がいなければあの村が襲われる事もなかった!!』

『…すごく、嬉しかった…』

『ごめん…、なさい……』

『…断ち切らなきゃいけないものがあるの…』

『どうして逃げなければならないのッ!?』

『一緒に戦いたい…!!』

『貴方も、後悔してるなんて…言わないで』








元親―――…


はっと目を開けた。
すると見えたのは、橙かかった青い空。






「ってえ…」





頭が痛かった。
此処は、






(砂浜?)






起きかけて辺りを見回す。






「俺は何をしてた…?」





はっとした。
思い出す声、知らない記憶。
それは。




―――青い海、水泡が漂う。
深い青の中で、抱き締められ口付けられた事。
そして…

―――元親が自分の胸に手を当てる。





(ねぇ…)




思い出した。
撃たれた筈なのだ。
なのに傷はなかった。




(そうだ)






「沙羅は、」






あいつは






何処に、いる







「沙羅」






おい







「何処だ、沙羅」








探した、海岸沿いを。
流されてくるなら絶対来る筈だから。
いる筈だから。
でも何処にもいない。

いない理由、








(心配しないで)







分からねぇ







(私は、幸せ者ね)








分かりたくねぇ








(―――私の命、貴方の中にずっと生き続けるから)









止めろよ









『ありがとう』







どんっ!と地面を殴り付けていた。



認めちまったら







終わっちまうんだ

―――知らない記憶が見せるのは
己が見たものじゃなかった。

海の中、沢山の瓦礫が沈んでいく。
避けながら水を掻いて、近づく先にいたのは自分自身。
目を閉じたまま波間に漂う己の上に、その影は移る。
視界は胸の、受けた銃弾へと変わり、近付くと同時に閉ざされていって。

次に見えた時は己の姿がどんどん小さくなっていって。
いや、こいつ自身が沈んでいってたのだと分かった。
俺に向かって手を伸ばして―――。

沙羅は、俺の命と引き換えに






居なくなったんだ



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