ありがとう

(…、ちか)







あ、あ…?









(―――…とちか)









何、だ?―――

ゆっくりと目蓋を上げた。
すると見えたのは白以外ない世界。
その中に自分だけが立っていた。
自分だけがいた。







一体此処は…―――






唯一分かるのは穏やかな風。
だが何処から吹いてきたやも分からない。
ただ波のように漂う風。
横を見ても、上を見ても何処が果てなのか分からない。
白く何もない景色に、くっと眉を寄せた時。








(元親)







『!!』







振り返った、少し先に沙羅がいて。








『…おめぇか
ったく、驚かせんなよ』








思わず苦笑してしまった。
でも自分以外の者がいて内心安堵して。








『なぁ、此処は一体何処だ』








何がどうなってる?








こんな何もねぇところ見た事ねぇ

―――元親が問う。
その間もゆらゆらと揺れる。
互いの服と髪。
緩く微笑んだままの沙羅。








『沙羅?』








首を捻る元親。








(大丈夫)









心配しないで










(私は、    )









『!』








(                      )








『何、言ってやがる…』









―――フッ…













『ありがとう』








気付けば切羽詰ったように駆け出していて。
抱き締めた筈だった。
感触は一瞬。
淡く粒子のように光って。
沙羅は、消えた。


[ 207/214 ]

[*prev] [next#]

[戻]




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -