現の夢
「―――はっ…」
まさか
「おめぇ、とは、な…」
のそり、揺れた丸い背中。
僅かに上がった顔は、静かに此方を向いて。
ゆっくり口角が上がり、不敵に笑っていた。
私の遥か向こうに立っていた、由叉を見つめて。
歯を噛み締め泣いていた彼女が、はっと目を開いてゆく。
カタカタと震えていた銃が滑り落ちて。
元親の体が傾いた。
「い、や」
―――ポタッ…
「いやああああぁ!!!」
駆け出した瞬間
―――ピシッ
建物は衝撃に耐え切れなくなっていたのだ。
床に亀裂が走り、崩れ始める。
伸ばした手。
届く前に、彼も私も海に飲まれた。
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