避けられない宿命

「―――知っておる」





沙羅がゆっくり目を見開く。






「あの女が我に逆らい、いずれ自害せん事も策の内」






その上で貴様のところに置いた






いらぬ事を漏らしたようだがな






「薬を頼り同盟等と仮初の決め事に頼るか、否」




カツッ…





「我が信じるは我のみ」







他がどうなろうと興味はない






我が知略こそ全て






「安芸の安寧の為ならば、何を駒にしようと
数多の駒を減らそうと」







構わぬ







「駒等、」







吐いて捨てる程おるわ








「―――些末な事よ」





―――ギリ!!

『なりません』





はっとして
顔を上げた。

刀に伸ばした手が止まる。






『怒りに身を委ねては、』






戦は戦を呼ぶ






『思い出して』





あなたが成そうとした事は







間違ってないのですから
―――私の手に両手を添えて
微笑む姿。
記憶で見た母、その人だった






『それでいいのです』






ッ…





『自分を信じて、沙羅』





『待って…!』





離れていく






『母様!!』






その姿は段々輝き







ゥ…






消えた







「―――…!!」




はっとして。
涙が溢れてきて。
でも、下を向き堪えた。





「―――はは、そうだよな」




その時、元親が口を開いて。
乾いた笑いを浮かべた。




「元、親…?」





元就の方へ歩き出す彼。
様子が可笑しい。






「てめぇはそういう奴だ」






な、に



この





嫌な予感






「話したところで通じる相手でもねぇ」






駄目だと思った







「沙羅」






このままじゃ








「お前は離れてろ」

「元親私は―――!!「お前を、」







巻き込みたくねぇ








「行け」

「ッ…、」







強い声と段々遠くなる背中に
かける言葉が見つからなくて








「駄目…元親」







呆然と、小さい声しか出ない







「駄目えぇぇぇえっ!!元親あぁ!!」

「―――ハナから、」






ビッ、と得物の穂先を元就に向ける。






「あんたと俺、戦り合うしか道はねぇんだ」




「ッ!!…、」







頭が真っ白になる








「さっきの続きといこうぜ毛利。
―――瀬戸海を懸けた戦だ」

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