決着の刻

即座動いたのは元親だった。



ガン!!

―――まるで時が止まっているようで。
元就は碇槍を止める。
でもそれは、体を逸らし輪刀を滑らせるように受け流していたのだ。



「ちっ」



ギロ、と背後を見る。
体勢を立て直さないうちに背中に移動する元就。



ギィ!!ダンッ!!

―――間一髪、振り返った元親が受け止めた。
火花が弾け直ぐ距離を離す。
そしてまた駆け、ぶつかる刃、金属音。
何度も繰り返される。



「お願い!!戦いを止めて!!
元ち―――きゃあぁっ!!」



爆風に巻き込まれ吹き飛ばされる。
ドン!、と柱に背中を打ち付け倒れ伏す。



「ぅ…っ」



震える。
手が、足が、体が。
視界が、定まらない。
―――限界が近い。





「はぁっ…はぁ…はっ」





苦しい






「オラぁッ!!」







肝心な時







「はっ!」







何も出来ない







私は








「毛利いっ!!」







貴方達を







「……」







ガンッ!!







止める為に、きたのに







「―――野郎ッ!!」







どうすればいいの







―――サァ…








どうすれば―――
ゆっくり顔を上げると見えた。
柱に凭れ気を失ったままの由叉が。






「由、叉…」







『長曾我部軍とは、戦いたくないんだ』

『どうやったら、二人…戦わなくて済むのかな』






俺、このままでいたいよ





姉さんだって…そうでしょ…?―――










そう




決まっている




だから




あなたの力が必要なの





お願い力を貸して…

―――由叉を起こし二人で止めるしかもう、浮かばなかった。






―――ズリ…





「はっ…はっ…」






立つ力はもうない。
沙羅は遠く見える由叉の元へと這い始めた。




―――



「てぃやぁ!!」

「フン」





キィ!!






「あんたずっとそうやって孤独に生きてくのか?」

「馴れ合いを良しとする貴様には分かるまい」

「違ぇ」






―――ス、





「違ぇよ、毛利」





目を細めた元親が押し返す。
元就は体勢を崩したが直ぐ立て直し、2撃目を受ける。






「あんたいつまで本音を隠していくつもりだ」

「本音だと?」





噛み合っていた刃を解き距離を離す。





「あんたは言った」








『安芸の安寧の為ならば、何を駒にしようと
数多の駒を減らそうと構わぬ』








「だったら、」






ガンッ!、と得物が噛み合う。






「豊臣の時、」







『長…曾我部…元…親……』








「―――どうしてあそこにいた?」

「…」





元就の表情が一気に曇る。






「可笑しいとは思ったぜ。
国の安寧を謳うあんたが、おめおめ自分で国を危険に晒してんだ」




「黙れ…」




「国以上に守りてぇモンができた、体張ってでも助けてぇと思った」




「黙れ…!」




「あんた、本当は由叉を好いてんだろ」

「戯言を言うなあぁぁぁあっ!!」




ガンッッ!!

ガギンッッ!!




「我が守るは安芸の安寧!!全てはその為の策よ!!
小娘の為等ではないっ!!」

「なぜそんな頑なに否定する!?自ら孤独になろうとする!?
やっとンなてめぇでも、信じてくれる奴が出来たんだろッ!?」

「貴様ぁっ!!その口を閉じろ!!」

「怖ぇんだろ!?
情に流され策通りいかなくなるのが!
国を危険にするかもしれねぇ!
だから孤独を選んだ!」






―――ガンッッ!!!





「あんたは逃げてるだけだッ!!」

「黙れえぇぇぇっ!!!」




元就が構える



「参(からすき)の星よ、我が紋よ! 」

「―――!!…」





元親が目を見開いた時、既に技が発動されていて。






「…日輪に棒げ奉らん―――」





空高く打ち上げられた元親。
見向きもしない。
背を向けて。






「―――我を理解出来る者は、」







我だけで良い










『―――元就』







―――フッ、







『知ってるよ』






「!!…」





突然頭の中、響いた声にはっとして。







「―――毛利…元就いぃぃぃいッッ!!!」





空を仰ぎ見た時には元親が迫っていて。
刹那、辺りは光に飲まれた。




―――




「……なに、が…」




爆風と目を開けていられない程の光だった。
沙羅は由叉を庇い、抱き締めながら崩れかけの柱の影に隠れていた。
あの場所を見てはっとする。





穂先が輝く。
膝を付いた元就の喉元で
―――立っていたのは元親だった。






もう、時間がない





「っ!!!…由叉起きて!!お願い目を覚ましてぇっ!!!」

「―――確かに、」





元親が言う。







「情が判断を鈍らせる、そんな時もある」






だが







「それが人ってモンだ」







完璧な奴なんざいねぇんだ





独りで生きてける奴なんざいねぇんだよ








「だから、助け合って
生きてくんだよ」






家族や、友、仲間
軍だって一人じゃ成り立たねぇ







「…」







「あんたでも、生まれた時は孤独じゃなかっただろ」







「……」








「もっと、」







人を、信じてみろよ








「………―――」



元就が目を伏せる。








「―――…とはいえ、あんたがしてきた事
許されるモンじゃねぇ」







元親が眉を寄せた。





碇槍を振り上げる。




「!!、
…元親止めてえぇぇぇえッ!!!」





―――パ!…

瞬間だった





響いた、乾いた銃声






銃弾が元親の胸を撃ち抜いた。



20130106

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