溶けない心

ッ…
―――得物が下ろされて。
分かってくれた、そう思った瞬間。




「―――言いたい事はそれだけか」

「え―――」




足元が淡い緑に光ったかと思えば光は強くなって、爆発した。
ダンッ、と地面に叩きつけられて。
手を離れた薬は風に撒かれ、散っていく。




「はっ…は…」




薬が…




「愚かな…斯様な交渉に我が応じるとでも思ったか」




近付いてくる元就。




「私を…殺す気なのね…、」

「言ったであろう。
『振り向けば、斬り捨てる』と」




貴様が招いた結果よ
―――刃を突き付けられる。




「我があの女の為戦を起こしたと、貴様は言ったな」




阿呆か、貴様
―――沙羅が眉を寄せた。




「我は人の為には動かぬ」




我は




「我が望むのは毛利家の安泰」




その為に人がどうなろうと興味はない




「あの女の生死等、どうでも良い」




我の目的に支障をきたす交渉等受けぬ




「ましてや毛利を脅かす元凶とも成りえる貴様の言葉等、聞く価値もなし」





故に





「此処で消えよ」





振り上げた。























「―――どうでも、いい?」





刹那、止まった





「どうして」




ギ




「どうしてそんな事平気で言えるのッ!?」





『聞いて聞いて!姉さん!』




豊臣に捕まり毎日が不安だらけだったあの頃。
でも毛利の事になると、由叉はたちまち元気になって。
喜んだり、怒ったり、悲しんだり…一つ一つ本当に大切そうに話してくれた。




由叉は




「貴方が好きで好きで堪らないのよ…っ、」




盗賊に殺されそうになった時、貴方は助けてくれた。
能力を畏怖されるのが怖くて人を信じられなかった由叉を、貴方は受け入れてくれた。

それがどれ程嬉しかったか、私には分かる。




「貴方だって本当は分かってるんでしょう…?」




豊臣の時、ボロボロになりながらも武器を取ろうと必死になって。
あの時の貴方は“本当”だった。




「国が一番ならあんな事出来ない」




それでも選んだのは




「大切だからじゃないの…?」

「煩い」

「守りたかったからじゃないの…っ?」





『―――本当に毛利が好きなのね』

『…そっか、そうだね』

『そうなんじゃないの?』

『いや、たまにね』





不安になるんだ





『元就は毛利家を安泰させなきゃいけないから、俺は沢山戦って力になんなきゃいけない』





でもね





『俺が勝手に役に立ちたいとか、守りたいとか、好きだとか言って
迷惑になってないかなぁ』




元就何も言わないから





『本当はどう思ってるんだろうって、』





すごく怖いんだ―――…








「―――どうして何も言ってあげないのよ!!」

「―――ッ!!
黙れェッ!!!」





輪刀が迫ってくる。
避けられない、思った瞬間。




「テメェの相手はこの、俺だろうがッ!!!」




ガ!!
―――火花が散った。


まるで時が止まったようで。

間に割り込み、受け止める姿に。




ゥ…
―――涙が頬を伝って




「元親…っ―――」




貴方を呼んでいた。



20121123

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