「―――…はぁ、はぁ…」



呆然と見ていた、目の前の光景を。
先程まであった天井、柱は此処に来て急になくなっていた。それも崩れ去っていたのだから。



「何が…あったの」



此処で



―――パキ、

沙羅は辺りを見回しながら歩き出す。
今まで通ってきたところとは明らかに違って、損壊が激しかった。大きく窪んだ地面、塗料が剥がれた柱。
―――パチパチと燃える炎。
此処で何があったのか、粗方察しがつく。




(これは)




「元親の炎…」



彼が戦っていた。
でも、彼は?
―――分からなくて。ふと、目を向けた時だった。



「……由叉?」



見つけて、柱の傍に寄り掛かっていた彼女を。駆け寄った。
体を揺すって呼ぶが目は覚めない。




(でも)




生きてる

―――体は温かい。
気を失っているだけだろう。




(でもどうして)




彼女が此処に居る、その理由が分からなくて。
何も知らなかった筈の彼女が此処に居る。しかも服は汚れていて




「もしかして此処で、」




二人が戦った?

―――浮かんだのは確信に変わっていく。城に居た由叉でも毛利が誰と戦っているのかは分かるだろう。
目的は知らなくても。




「…―――」




由叉の事だ、
きっと元就を守ろうと来た。
結果元親と…




「元親は―――」




呟いた時だ、背後で音がした。
聞かずと分かって、息を飲む。




「…毛利元就」



触れる冷えた感触。
動けない、何故なら。
―――私の背中に輪刀が突き付けられていたから。



20120925

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