今と昔

「本当は今も命令通り、動かなければいけない。
でも、」




まだ自分の意思で
抑えられるから




「話せるうちに、…話さなければと、此処にいるのです」




さっきよりも少し苦しそうに、途切れ途切れになる言葉。





「でも貴方様が思っているような嫌な事ばかりでは、ないのですよ」





青ざめていて、でも笑っていて。




「生き長らえたい私達と、この力を利用したい毛利家。
最初は互いの思惑の一致…それだけだと思っていました」




でも違った




「先代はお優しい方でした」




分け隔てなく人を受け入れ、でもまとめあげる。
とてもしっかりした御方。

―――神流は目を閉じた。




「蘇生はその者の髪と、冥鏡水で出来ます。
だから私達は皆、いざという時の為、髻(もとどり)を持っておりました」




でもそれを託せるのは
本当に信頼出来る方だけ。




「先代こそ、その御方でした」




今までも様々な方に仕えてきましたが
皆、私達の力を恐れるか、利用するか。
でも弘元様は、私達を縛る事はなかった。
家族のように接してくれた。




「だから先代に託したのです、冥鏡水と髻を」




私達が自害を選んだ時も心から憂い、そして許してくださったあの方に。




「でも今は違う…」





毛利家は変わってしまった





「私がこの世に戻され、見た元就様は…
昔とは違いました」

「…」




違った?

―――怪訝そうにした元親を見つめて。




「元親様は、」




元就様の、この戦の目的を知っておりますか

―――言った。




「アンタは何か…知ってんのか?」

「不完全な間は生き返らせた者の心が読めるのです」

「ンな事もありえんのか…」




驚いた。
六条の作った物の、常識外れな作用にはもう慣れたと思っていたが。




「―――元就様は、」




スッ、と視線を落とす。





「冥鏡水で六条家皆、生き返らせようとしているのです」

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