冥鏡水

「私はこの世の者ではありません」




貴方様の知るように一度死んだ人間





「元就様の仰る通り、薬で生き返った者」

「生き返った…」

「はい、その薬は生前一族が作り出したもの。
一度死んだ者を生き返らせる―――冥鏡水と私達は呼んでいます」

「…」

「ただ、蘇生するにも条件がありました」




洗練された神聖な場所。
そこに陣を描き、陽の光の下行われなければならなかった。




「…厳島、か」

「はい、」




そして私達は毛利家に志願した。
この力を毛利に捧げる代わり、私達が厳島で薬を使う。十分な交換条件だった。




「でも蘇生等、あってはならない力。故に、そう簡単に出来るものではないのです」




人は死ぬ、それが世の常。
それに反した事なのだ。






「―――貴方様も気付いておられるでしょう?」



私達六条と他の者達とでは力の質が違う事を



「…」

「私達は元々国の四季を司る為生まれた。
その為に力を、人とは違う運命を生まれながら決められていたのです」

「……」

「蘇生という力を生み出せたのもきっと、回り回って…この国の四季を守り続ける為だったのかもしれません」



でも



「完全な力なんて、」



ない



「蘇生し一日は、肉体が不十分で力も半分しか使えない」

「!」



何の前触れもなく神流は突然自分の腕を斬り付けた、…ように見えた。
が、刀はすり抜けて。息を飲んだ。




「驚かずとも傷はありません。今の私は意識…魂だけが戻り、器…肉体がないのと同じなのですから」

「んな事、ありえるのかよ…」



驚愕するしか、なかった。


「反面、今は誰よりも強いのかもしれませんね。誰も私を倒せないので。
元就様が私を残したのもきっと、それが理由」



顔を上げる神流。




「そして程なく実体化し、私は完全にこの世に戻され…生き返る」




魂と肉体が揃った時こそ、その時。




「…そうなったら何が起こる」

「不完全な今は、意思―――心があります」




だからこうして貴方様と話せる




「そして完全に生き返れば私の刻印は消え、寿命の制約は消える」

「!」

「これからは私が普通の人としていきるはずだった、普通の…人の寿命を生きる事が出来る」

「そりゃ…本当か!?」

「でも!」



でも



「私は意思をなくし、」



生き返らせた者の



「元就様の命しか聞けなくなるのです」

「!!…―――」






それは





探していた、刻印を消し寿命を延ばす方法。
でも絶対に




「………」




選べない方法で。





『彼女は僕の命しか聞かない』





同時にまるで






(同じじゃねぇか…、)





あの時の悔しさを





「それじゃあアンタ等は、」





思い出すようで








「都合いい駒じゃねぇか…」





どう言葉にしたら分からないまま、出ていた






「元親様は、お優しいのですね」





言った彼女が




沙羅と同じ





―――困ったように笑うから





「………―――」





何も言えなくなる


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