繋がり

ポッ…





涙が溢れていた。
いくつも砂に吸い込まれて。




「そう、だったのね…」






何の疑いもなく思っていた。
でも理由があった。
この能力と寿命には。

―――私と由叉は双子だった。
もとは一つの命だった。





「……―――」





私が多く受け継いだだけだった。
だからどちらか一人が犠牲となればもう一人が生き残れる。




「だから毛利は…」






私の命を狙った

―――ふらっ、と立ち上がる。






「…なら、」






『元親様は薬を手に入れようと厳島に向かいました』






「薬なんて、」





『それは力を保持したまま、力と引き換えに失われた寿命を取り戻し刻印も消す薬だと、』






「嘘じゃない…」






そんな薬あったならこの戦は起こらなかった





毛利は由叉を助けられた筈だから






薬…






『一時的な薬でございます。
―――大切になさって下さいませ』








そうだ

―――小袋を取り出す。
凛がくれた薬。
私の症状に合わせて調合してくれたこれは、力を保持したまま刻印を半分も消した。
途中で刻印はもとに戻ってしまったが、効いていた時は体調も良かった。





「凛なら…」




薬を完成させられるかもしれない―――。

目を見開いた。
彼女の腕は群を抜いている。
毛利の持つ六条の情報を合わせれば…。





「毛利はまさかそれをも見越して…凛を条件に…」





手練の医者なら毛利にだって居る筈。
あの毛利なら徹底して揃えるだろう。
でも凛じゃなきゃいけなかった、それは






「薬を作る為…」






この薬を調合した凛が一番、完成させる可能性がある





「そう…、どうして凛なのか…分からなかったけど
そういう意味だったのね…」






毛利が狙うのは私と、凛。
でも確信のない薬より私の命を優先した。





(凛―――)





四国には慶次がいる、大丈夫。




私は





「……」





証明しなきゃ





「この薬を、毛利に…」





ぼやけて霞む。
でもまだ見える、歩ける。彼らのいる場所に続く道は見える。
沙羅は歩きだした。






「元親に伝えて…止めなきゃ…」






私も由叉も生き延びられる




大丈夫だと。






だから今此処で決着をつけるのだけは








止めて―――…。






―――







…―――キ!!ガ!



「うらぁっッ!」





飛び散る火花、残滓。
互いに一歩も引かず戦いは続いていた。




「はっ!」




!!




回転する輪刀に弾かれるが舌打ちし体制を立て直す。
直ぐに火を纏った碇槍が元就を襲う。





「ぬ…」



ガン!、と地面に突き刺さり砂が舞い上がる。
身を翻し躱した元就。着地した刹那ビッ、と頬が切れる。






「どうした毛利、すかした面に傷が出来てんぜ?」



「…」




元親が目を細める。




「―――あんたにはがっかりした」






声が低くなって。







「あんた見てぇな奴でも、あいつだけは特別だと思ってたんだがな」





「…」





「薬の一つや二つ減ったところで、策に狂いはねぇんじゃねぇのか」






わざわざ凛をだしに、四国を狙い、沙羅も狙う。
あんたの本当の目的はなんだ。







「―――あんた、何考えてる?」










沈黙が降りた







―――









「――薬、薬と煩い男よ」






すっ、と上がった視線。
冷たい光を宿し元親を見据えた。






「その目で確かめるがいい。
貴様の思っていた薬がどのようなものか」






突然ゴゴゴゴ…と地鳴りのように音を立てて
元親の背後にあった門が開き始める。






「!?…」






なんだ―――…






反射的に離れ目を向ける。
門の向こう側に見えた人影。
言葉を失った。







―――ザッ…






「お久しゅうございますね」








―――ザッ…








「四国の長曾我部の、」








若子様








「あんたは…!?」










青い瞳。
見目形。
思わせるのは過去の記憶と、今の記憶。

―――現れたのは滅亡した筈の六条の奥方、沙羅の母―――神流だった。



20120620
20120905改

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