宿命
「まさかアンタから書状を貰うとはな」
少し俯き笑みを深くする。
「しかもご丁寧に俺が欲しいモンを出してきやがった」
…何故凛を条件に出した?
―――黙って問えばやっと、口を開く。
「簡単な事…あの女の医の腕は安芸に置くに相応しいもの。
我が国の安寧の為手に入れんとした」
「………」
「だが今となっては、無意味よ」
貴様は最良の条件を蹴った
「貴様が好かぬ犠牲とやらを出さず、双方望まんものを手に入れる。
…この機を逃す等、相も変わらず愚かな男よ」
「勘違いするな、俺はハナからアンタの条件なんざ信用してねぇ」
言うやいなや穂先を元就に向けた。
「アンタは四国に水軍を送り込んだ」
「……」
「アンタの方こそ、ハナから守るつもりねぇんだろ。
そして俺が此処に来るってのも計算の上。だが残念だったな、四国は落ちねぇ」
『元親、あんたの留守は俺がしっかり預かる』
『アニキ、任せて下せぇ!!』
「信頼ある奴らに任せてきた。
手出しはさせねぇぜ」
ぐっと眉を寄せて
不敵に笑った。
「―――白黒つけようじゃねぇか毛利。
俺とアンタ、どっちがこの瀬戸海を治めるに足るか」
そして
「…悪いが薬は奪わせてもらうぜ」
あいつの為に――――。
「瀬戸海を荒らすに飽き足らず、斯様に些末な目的でこの神聖なる厳島を荒らすか…」
キッ、と元就の目が鋭くなって。
「…野蛮な賊めが。
いいだろう、我直々手を下してやる。
二度とその姿…我の前に見せぬようにな!」
「はっ、こちとらその口…二度と叩けねぇようにしてやらァッ!」
元就が地を蹴った即座、元親も飛び上がって。
互角に交わった一合。紫と緑の光が弾けた。
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