けじめ

「―――姐御、何処行くんですかい!?」

「貴方達は富嶽に戻って。人手が足りない、情報も伝わってない。
毛利の狙いは私の命だけじゃない。富嶽を奪って退路を塞ぐ事でもあるのよ」

「だから此処は敵が少なかったのか…」

「富嶽が危ない…此処もすぐ増援が来るわ。
その前に行って…!」

「姐さんは…」

「此処から先はアニキしか行ってないんですぜ!?」

「一人で行くってんですかい!?」




ッ…





「―――私が止める」







この戦を

―――彼女の言葉に目を剥く。




「何言ってんですかい!!」

「この先何があるかも分からないんですよ!?」

「姐さんに何かあったら俺達…」




刹那だった。
耳を劈く音と共に、空に突き抜けた紫と緑の光。同時に水辺を渡ってきた暴風に吹き飛ばされそうになる。離れた本殿からだというのに立っているのもやっとだった。




「始まった…」




顔から腕を離した部下が呟く。
遅かった。とうとう始まってしまったのだ、二人の戦いが。
もう、一刻の猶予もなかった。




「―――姐さん!」

「大丈夫」





止める者は居なかった。
足を止め振り向く。






「元親と、生きて帰るから」







絶対に






「だから生きて」





生きて会いましょう―――。

言えば一瞬降りた沈黙。
だが後にはいつものような活気溢れる顔に戻っていて。





「待ってますぜ!」

「守ってみせます!!」

「アニキを…」




頼みます

―――返ってくる返事に微笑んで走り出した。






―――






時は少し遡る。



ザザザッ…

聞こえる足音。
だが微動だにしなかった。




―――ザッ、

一定の距離で止まる。
風が二人の間を通り抜けた。




「よぉ、毛利」





その背に問えば





「望み通り来てやったぜ」





風が強く吹き付けて。
ゆっくり振り向いた元就の目が細み、
元親を捕えた。



20120318
20120905改

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