好きじゃなくていいから、

―――ギ―――




「―――…!!」





声が出なかった。
頭を支えていた手が、そのまま俺を抱き寄せて。
片手で胸に閉じ込められていた。





「毛利に…言われたのか?」






温かくて、忘れていた人の温もり。






涙が溢れていた。






「違、う…」







俺はただ





前みたいに一緒に






傍に







―――ギ―――






手を握って欲しかった。







あの人の手で。









―――見て欲しかった。






俺をもう一度








見て欲しいよ…っ―――。






「なら―――信じてやれよ」






奴の事ずっと見てきたんだろ






「あんたが信じねぇで誰が信じる?」






奴の事、ずっと見てきた




「お前が信じるしかねぇだろ、由叉」

「!!…」





ゥ…

俺は






「うぅっ…」






口を聞いてくれなくても






「ひっく……」






目を背けられても






「ひぐっ…」







大好きだから










―――ポタ…ポタ…














傍にいたいよ…っ――――。





―――





「―――…」




立ち上がり、元親は由叉に背を向けた。

先程まで彼女は泣いていて。何も言わず、ただ胸を貸していた。
泣き疲れて眠ってしまった彼女を門の傍に運び、横にすると碇槍を担いだのだ。



「……っ、」



僅かに眉を顰めたのはズキ、と痛んだ所為で。
触れば右肩と脇腹がざっくりと切れていて。





(あの時のやつか)





「―――大したモンだぜ」




鬼に一撃食らわすなんざ。
アンタは十分

“毛利の懐刀”だ―――。



俺もまだまだだな





(女の涙には…弱ェ)





「………」






確かめなきゃならねぇ――。






―――ザッ、

歩き始める。
決戦の地へと―――。



20120306
20120905改 


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