残り、

ゴゲ!…ゴフッ、





「おい…
しっかりしろ!!」





抱き起こし呼びかける。
体を揺すっていれば、由叉はゆっくり目を開けて。





「はは…見られちゃった」

「お前……」

「力の…代償だよ」





六条に生まれた定めさ





「知ってた…姉さんの事」





命が危ないって事





「俺も、…だから」





『―――ッ!』




ゴ!ゲ!…







『はぁ…はっ…』








初めて見た時は言葉を失った。





元就から聞いたんだ。





自分の力が自分の生命力と引き換えなのだと





「まだいけるって…思ってた。
……でも…っ限界、なのかな…ゲホッ」

「おい!!」







元就―――…






―――





『―――由叉』

『………』

『何故呆けた顔で我を見ておる』

『だって…』





今…名前……





『元就が…
名前…呼んでくれたあぁぁー!!』







初めて呼ばれた瞬間だった。
今まで貴様しか言わなかったあの人が、呼んでくれた自分の名。

毛利軍に入って数十日。
大きな戦があった。俺はいつものように出陣したけど、思いの外手こずって大怪我を負っていたらしい。
気付いたら布団の中だった。

暫く動けなかった体が漸く歩ける位になって、元就に直接呼び出されたのだ。

策に従わず一人勝手に進んだ事。
余計な行動で兵が乱れた事。
無策に刀を振り貴様は馬鹿か―――
次々と突きつけられる叱責、罵倒。
この位、昔から言われ慣れていたから聞き流してたけど。
最後にしっかり聞こえた由叉という言葉。




思えばあの日からだ






俺の中で何かが変わり始めたのは―――。

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