守る為、

―――ヒオォォ!!

突然四方八方から風が吹きつける。



(これは…)



ッ、





(切れる…
風の刃みてぇなモンか―――)





不規則に形を変えるそれ。
まるで蔓のように動き迫ってくる。
次々と由叉の下から生み出され、元親に向かって伸びた手が示すままに刃も飛んでいく。





―――ニ





「やっぱいいじゃねぇか。こういう張り詰めた戦いはよ!」





オメェの本気





「もっと見せてみな!!」

「…、…っ!!」






由叉が顔を歪める。
空いている片手を勢いよく横に振り払うと、大きな風と共に元親に向かって薙ぎ払われた。それを飛んで躱す。





「―――見えたぜ」

「くっ…」





躱された
なら次は―――ピタ





一瞬だった。
音も動きも、風も止まり目を見開いた。

―――槍先が鋭く光って。
突き出していた腕を強く掴まれ一歩出た足。




首は、槍の内側の刃と中心の太い柄に取り囲まれていて。
少しでも動かせば首は落ちる、それ程迫った距離で碇槍は止まっていた。




「言ったろ、見えたってな」

「―――…ッ」





目の前に立つ元親は少し厳しい表情で。
由叉を見下ろす。





「どうして」

「読めたかってか?」





お前の動きを。





「お前の力、風を操るだけじゃねぇ、色んな形に変えられる。
今みてぇに薄く鋭くすりゃあ刃にもなる」




チラッと上着を見て。




「だからって防ごうとすりゃあ獲物の間すり抜けてまた刃になりやがる。
すげぇ能力だぜ」

「……」

「物理的な攻撃は効かねえもんだから
防ぎきれなかったが」




スッ…と目が細む。





「甘ぇよ」

「………っ」

「西海の鬼をナメてくれるなよ。同じ力をずっと見てきたんだ。読めねぇ訳ねぇだろうが」

「…姉さんか」

「…お前は力使ってる時一歩も動かなかった。
どうしてだ?」

「……」

「力使いながらはその場を動けねぇんだろ由叉」

「………」




動けばいいものをずっと同じとこにいやがるたぁ
おかしいと思わざるを得ないだろうが。




「確かにあんたの力は強ぇさ。
防ぎきれねぇし予測つかねぇ、加えて身体能力も並みじゃねぇ。
…だが」

「…」

「背中ががら空きじゃ何の意味もねぇ。
他の奴らは倒せてもこの西海の鬼は倒せねぇ!」




ギッ、




「相手が悪かったな、諦めな。
お前とは戦う理由がねぇからよ」




大人しくしてろ

―――ぐっと拳を握り締めた。






―――






「―――…確かにその通りさ」





あんたの言う通りだよ元親





「俺は守りが全然駄目さ
昔から…力任せに突っ込んでいくしか出来ない女さ、分かってる」





でも






「でもこれが俺のやり方なんだ」






『万古…我が下に居れ』







「俺には…ッ」






『由叉』






「こうやって守るしかないんだよ!!」





刹那、キィンと表れて、元親を取り囲むのは風の檻。
風の蔓が幾重にも張り巡らされた中に、元親は閉じ込められる。




「!?ちッ…」




(こいつは…―――)



すぅっ…と檻の至るところが、段々刃に変わっていって。
幾つもの矛先が向くのは内側、檻の中。
元親の手を振り解き退きながら、由叉は手を振り翳した。





(防ぎきれねぇ―――)





「うわぁぁぁあッ!!!」





ブッ、





『―――我が懐刀よ』





元就……っ――――――。

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