意地
ザァ――――――…
風が海を滑る。
小さく波が起こった。靡いた二人の髪。碇槍を担ぎ直すと苦笑する。
「オメェが奴の切り札って訳かい」
「…どうして攻めてきたのさ元親」
「ンなモン聞くまでもねぇだろ?」
お前の思ってる通りだと思うぜ、
―――言えば眉を顰めて。
元就と、と呟く。
「―――決着を着けるつもりなんだね」
厳島の至るところから聞こえる金属音。
互いにもう引き返せないところまで来ていた。一度切られた火蓋はその銃口から火を噴き、戦場に爪痕を残す。自分達の勝利の為、命を奪い合うだけ。
「でも」
カチャ…
「―――させないよ」
取り出したもう一つの銃を構え、ぐっと顔を顰める。
「俺と張ろうってのか」
お前とはやり合いたくなかったんだがな
―――低く呟くと得物の矛先を由叉に向けた。
「言っとくが…手加減しねぇ。
あまり時間がねぇからよ、早くカタ付けさせてもらうぜ」
「元就の所には行かせない。嫌でも此処にいてもらうよ」
ギュッ、と銃を握り締めて。
「“毛利の懐刀”の名にかけて」
俺が
「あの人を」
スッ…
「―――守る」
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