願うもの

「…ぐっ!」

「…!!」






強い風が隆家を吹っ飛ばす。





「行きな沙羅ちゃん!!」





いたのは慶次だった





「慶次…」

「早く!!」





行かねぇと止められなくなる!!

―――叫んだ彼にハッとして。

そうだ私は…。

―――見つめて頷いて。
刀を拾うと船を飛び降りた。






―――







「―――…おらぁ!!
野郎共、嵐よりも激しく暴れてやんなァッ!!」

「「「うおぉおッ!!」」」






回廊を抜け元親はひたすら敵を斬り伏せる。

厳島は水軍に取り囲まれ長曾我部軍は直接敵の船に乗り込んだ。
そして厳島に上陸し今に至る。辺りには止まない剣戟が繰り広げられ、追撃の砲弾や銃声、矢が飛び交っていた。




「はっは、刺激のねぇ戦だぜ。
野郎共!片っ端から喰らってやんな!!」





何百もの敵兵を仕留めた得物は黒光りし、敵も味方も泥と血で塗れていた。

瀬戸海を挟んで長い間いがみ合っていた二国。
戦いは激しく休む暇もない程だったが、元親は笑みを刻んでいた。




「弱すぎんぜ、もっと本気出したらどうだい?」




碇槍が周りを飲み込んで。
毛利兵を一掃する。






(毛利の野郎がいんのはおそらく本陣―――か)





「―――此処は任せたぜ野郎共!」

「分かってますぜアニキ!」

「思う存分暴れてきてくだせぇ!!」






走り抜けた。
平舞台、高舞台を突っ切り元親が先頭きって進んでいく。
ここからは大将同士。長年の決着を着ける為に―――。



―――ド

「!」




ガ!
―――瞬間、真正面から飛んできた弾。碇槍とぶつかって。
床に転がった鉄の礫(つぶて)を一瞥する。
足を止めて元親は眉を顰めた。





「…オメェか」





由叉。

―――朱色の柱の影から現れる人影。
焦げ茶で肩まである髪が風に靡く。
藍色の瞳がスッ、と細まり元親を見据えて。
腕を上げた由叉が、煙の上がる銃口を元親に向けた。





「此処からは通さない。―――元親」



20120223
20120904改

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