力と寿命

「私には分からない」




何人もの命を簡単に犠牲に出来る毛利の気持ちが




「最初は戦いが私達一族の生きる糧だった。
力を必要とされ戦の為に命を張るのが誇りだった。
毛利家に仕え良くしてもらい、一族は幸せだった」




流れてくる一族の軌跡。
私が物心つく前だから少し勝手な解釈だろうけど、





「けど私達の力は永遠じゃない」





力を得るには寿命を減らさなければならない。
自分を犠牲にしなければならない。





「私達は…生きたかった。
静かに、穏やかに」





だが望むように生きていくにはもう、遅すぎた。
一族の力は各地に広まり、狙われる日々。

力に翻弄され疲れてしまっていた…一族は。
だから永遠の眠りにつく道を選んだ。 





「でも私達は後悔していない―――守りたい人を、思いを見つけられたから」





自分だけじゃない何かを、
大切にしたい気持ちに気付けたから。





「皆思いを抱えて戦ってる。それを国の為なんて言って簡単に潰して、民を脅かして―――。
…これが貴方達の望む安寧なの?毛利元就や貴方程の人がいるなら、犠牲にせず国を守れる方法はいくらでも浮かぶでしょう…?」

「…」

「元親は全員の命を奪って勝とうなんて思ってない。
兵を駒扱いするやり方が気に食わないだけ…民を守りたいだけなのよ―――だから…!」




スッ…と向けられた刀が告げる。
差し出した手を沙羅は止めて。隆家は静かに首を振った。




「分かっているでしょう」




和解等無理だと




「元就様の策は只一つ―――今も、そしてこれからも」




今までもずっと、
そうやって守り続けてきたのです。

安芸の安寧が保たれてきたのです。




「………」

「先代は今とは違う方法で、国を守ってきたのかもしれません」




しかし先代を失った後弱体化した毛利家を立て直したのは、元就様なのです。





「でもそのやり方は―――「それがっ、」





元就様なのです

―――スッ、と強い瞳に射抜かれる。
真っ直ぐ汚れのない瞳で、何も言えなくなる。




「―――故に」





ジャリ…と草履が床を擦れて。





「そなたには此処で死んでもらう!!」

「!!」






勢いよく風を切った刀。
頬を掠めた。






「―――、由叉にっ!!」






由叉に会わせて――――!!






「話をさせてッ!!」





隆家の猛攻を防ぎながら叫んだ。





「私は…!!「由叉殿はッ!!」





!―――…
弾かれた刀は回転し床に突き刺さる。

突き立てた刃の切っ先が沙羅の喉元に触れていて。
仰向けになった彼女に隆家が跨っていた。ぐっ、と両手で刀の柄を握り締めていて。
沙羅は顔を歪め、目の前の男を見つめた。





「由叉殿は…」





ギッ…





「そなたが死なねば死んでしまうのだ…っ」

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