意志のままに

それでも




「―――私は行く」





もう






「“今”しかないの―――」







分かる…私には時間がない

刻印は今にも心臓に達しそうで
呼吸だって安定しない
体も言う事をきかなくなってきている






「“今の私”にはこの戦が最後になる」






正直此処で彼を待っても…それまで保つか分からない






ただ待つしか出来ないなら、少しでも早く
薬を手に入れて…生き延びたい





今になって戦の激しさなんて関係ない





この一瞬を何としても生きたいの…






『ずっと俺の傍で舞えよ――…』






自由に、昔のように…空を舞いたいの






風でいろ、沙羅







彼の居る空を――――。





ァ…

―――風が吹いて、二人の髪を撫でる。






「此処で残れば絶対に…後悔する」







だから







「お願い……っ」






行かせて………っ、

―――気が付けば凛に縋り付いていた。
そっと、背に伸びたのは彼女の手。温かく優しい手で。







「―――決めて…しまわれたのですね」





言っても、聞かぬのでしょう
貴方も、元親様も―――…

ふと凛が立ち上がって
戻ってくると沙羅に小袋を渡す。



「これは…」

「一時的な薬でございます」




―――大切になさって下さいませ




「ありがとう」

「沙羅様、」





生きて






「元親様と共にお戻り下さいませ――…」

「えぇ―――」






絶対に―――…。






―――






ュッ、

―――何ヶ月ぶりだろうか。
豊臣との戦以来、着ていなかった戦装束。腰に巻いた帯を結び、二本の刀を差して。
門を潜ったその時




「ちょーっと待ったぁ!!」




ザッザ…と塀から現れた影。
沙羅の前に立ち塞がって。
大きな長刀を担ぎ、赤と金という派手な格好は知った顔だった。




「貴方は…!」




前田慶次――――。




20120213
20120904改

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