互いの想い
「好きだ…沙羅」
お前を愛してる
―――そう告げれば目を見開いて。
その瞳に涙を溢れさせギュッ、と細める。
「元親…っ」
「お前は何も迷う事ねぇんだ。
―――謝らなきゃなんねぇのは」
俺の方だ
「え…」
元親、が?
「俺はお前の気持ちが知りたくて急いていた」
『それでいつか、お前の気持ちが決まった時、答えを聞かせてくれ』
お前の苦しみも悩みも早く知って和らげてやりたい。その一心でお前に尋ねた、触れた。―――お前を見つめた。
「それでお前には最初、四国にきてから居心地悪ぃ思いもさせちまった」
素性が明らかでない上、特殊な力を持つ沙羅が間者と疑われるのは当然だった。彼女は言葉には出さずとも気にしていた。
「俺はお前が特殊な力を持ってたって好きだ、それは変わらねぇ。でも周りは必ずしもそうじゃねぇ。お前の事だ、気を遣って素直に受け入れてただろう」
「…」
「俺の言葉がお前を苦しめ、縛り付け逆に言いにくくさせていた。
―――俺は気付けなかった」
「そんな、こと」
「竹中に、」
『これは面白いね。教えがいがある』
「逆手に取られ、」
『卿がやろうとしているのは無駄なのだよ。守って何になる?いずれ死ぬ。分かるかね?
その娘は…愚かにもそのまま死に行く事を選んだのだからな』
「松永にお前の意と、俺の望みの違いを突きつけられて」
気付いた
『それがお節介なのよ…知った様に言って…我が物顔で…何が分かるの』
「お前の言うことは最もだった。お前の意を真に汲んでやれてなかった」
お前の辛さがどれほどのものかを
「だが、今なら少しだけ分かる気がする」
奴らには感謝してるぜ、俺に本当の意味で真剣に向き合うきっかけを作った
「俺はこういう奴だからよ、無鉄砲でお前の気持ち汲んでやれてねぇこともあっただろう。辛ぇ思いもさせた。お前はそんな俺に嫌な顔せずついてきてくれた。でも」
もう
「十分だろ。他の奴の顔色をうかがうのは。
もっと自分のために…貪欲に生きろ」
お前はそれくらいしたって誰も咎めねぇ
そして
「そこにいる相手が俺あってもなくても」
俺は
「―――待ってる。お前が答えを出す時まで」
その時までは
「望め、自分の好きなように。…俺は叶えてやるぜ?
―――だから何も心配するな」
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