十六夜の華詞

(……っ―――)






強く目を閉じていた。
全身を包み込む大きな海。
ふと目元を指が触れて。涙を辿るように、目尻に滑った。
ゆっくりと目を開ければ、彼の姿があって。ふっと笑った彼に引き寄せられる。

背に、頭に手が回されて。
近づくその顔。

口付けられる―――。
思ったが、怖くはなくて。
腕に、肩に手を添えてこちらからも寄れば、唇が重なった。



―――月明かりが照らす海の中。
淡い光が二人の姿を映し出す。

銀髪は頬を掠めて。輝く様はとても綺麗で。思わず見とれて。




――刹那、顔を歪めた沙羅。
ごぼっ、と漏れた息、水が赤く染まって。
彼が目を細めた。彼女を抱き締めて海上へ向かう。



――――はぁっ、
空に漏れた沙羅の吐息。それに元親が一息零す。

互いの呼吸を聞いて、見つめて。
彼女の口元に残る紅にそっと、指を走らせる。
そのまま耳元に手を伸ばし唇を寄せれば、彼女も唇を寄せて。



口付けを交わした。



今度は沙羅も
元親の首に腕を回して。
深く、啄むような接吻。
何度も求めて、重ねて。

そしてゆっくり――離れる。





「沙羅―――…」




頬を伝う雫。伸びてきた彼の指先。
涙に触れる。





心が溢れた。
想いが、ぬくもりが
彼への愛しさが―――。

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