海の調べ
「元親…?」
「たまには波のねぇ夜も…いい」
バシャッ、と水を掻き分け近付いてくる元親。
銀髪を滴る雫。濡れた髪を掻き上げる腕、鍛えられた体は今
月明かりを受けてくっきりと輪郭を見せていて。
男の人の体で。魅せられて。
そういや―――と、口を開く彼。
「お前に刀渡されたのも、こんな夜だったな」
『わ、悪ィ!!/ご、ごめんなさい!!』
「あん時は力みすぎてよぉ…うっかりお前の唇、
奪っちまうとこだった」
まぁ、今はもう奪っちまったけどな?
―――付け足しニッ、と笑う元親。
気付けば彼の調子に乗せられていて。上気する頬。気恥しさに思わず目を逸らした。
だがその瑠璃色は再び俯いてしまう。
「…何を見てた?」
「え…」
「夢見てたんだろ。聞こえてよ」
たまたま通りかかったらな
「…………」
立ち尽くす彼女の、その腕を引いて。
傍にあった大岩、そこに座らせる。海に浸ったまま大岩に寄り掛かり、見上げた。
「思い出したの…」
私達の過去を
一族の
「父と母を―――…」
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