選ぶ答え

「……」

「……」

「……」

「沙羅」



ぎゅっと肩を抱き寄せて




「お前はどうしてぇんだ?」

「え…」






どうしたい?






「妹を守りてぇか?
俺達の役に立ちてぇのか?
生きる意味ってもんを知る為に」

「……」

「例え自分が死んでも、」

「違…うっ」




私は貴方に気付かされた





「“守りたい”、“役に立ちたい”
それだけの為に生きてきた私を」




貴方は変えてくれた





「それはとても苦しくて」






“守りたい”、“役に立ちたい”




そう願う度に想いは募るばかりで






「離れたく…なくなって」




傍に居たいと思った




生きたいと思った





そう言葉を切ると
彼が優しく見つめてきて。

抱き込む腕の力が強くなった。




「元親は、」




貴方は





生きている…その意味は何だと思う?





「さぁ…俺にも分からねぇな」





ただ






「死んだら終わりだ」





どうにもならねぇ








だが生きていれば…何とかなる




俺はそう思うぜ





「生きていれば、意味はある…?」

「あぁ」





生きてなけりゃあ
“守り”“役に立つ”事も出来ねぇ




「だからこそ俺は、お前の妹が生き急いでるように見えた」




毛利に好意を寄せているのは確かだ



だが自分を追い込んでいるようにも見えた




昔のお前のように










―――それは奴を守りたいのか


奴の役に立ちたいのか



存在意義の為なのかは分からねぇが





「今度はお前が気づかせてやりゃあいい」




お前の言う通り俺と毛利は決して相容れないだろう
奴が奴である限り

いずれ決着を付ける時が来る



だがお前が由叉に呼びかける事は出来る

本当に毛利があいつを好いているならば…その声は毛利に届くかもしれねぇ






「お前が出来る事をやりゃあいい」

「私が…」




今すぐに答えは出ないかもしれない

だが、見えてくる筈だ
今のお前なら

お前が望むなら
俺も出来る限り力になるさ





「元親…」




静かに笑って





「ありがとう」





私が出来る事を





探してみるわ―――。




―――





―――ケッ…




その夜、部屋に響くくぐもり声。
突然止まらなくなった咳に沙羅は目を覚ました。




(夜風に……当たりすぎたかしら)




漏れる咳の音。
閉じ込めるように顔を布団の中に埋める。




(苦しい……っ)




いくら待っても収まらない。
それどころかその音は次第に大きく
当たりに響くものになっていく。

刹那、





ドンッ




「…!!!―――」




大きな咳を一つ。
目を開けてそこには





手を濡らす赤



そしてそれは真っ白な布団を染めていく




呆然と見つめ、浅く早くなっていく鼓動




突如焼けるような痛みが右腕と心臓を走って






「嘘、でしょ……」




声は震えていた





着物をずらして見たそこには、右腕だけでなく右胸を覆う斑点。




―――心の臓に伸びる刻印が、再び浮かび上がっていた。



20111120
20120903改

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