信じてきた言葉

「毛利がしてきた事は私も知ってる」




自軍を捨て駒のように扱い、勝利の為なら手段を選ばない冷徹な策略家。
国の民もそんな国主を恐れ、四国を始め他国に逃げる者もいる。
国の為ならどんな犠牲も厭わない―――それが毛利元就。





「貴方とは決して相容れない事も…」

「……」



彼が目を細めて、沙羅を見遣る。




「―――お前は騙されているとは思わねぇのか」




由叉が奴に利用されているだけとは思わねぇのか。
毛利の事だ。力だけが目当てで、あいつの気持ちなんざこれっぽっちも考えてねぇ。
寧ろその気持ちを利用していると




「私も疑った。でも、」








『俺の心を満たしてくれる大切な人なんだ』







「あの言葉に、笑顔に嘘はなかった」




長年一緒にいたから分かる。
由叉は嘘を付くのが苦手。
いつも真っ直ぐで、素直に気持ちを表せる。
私とはまるで逆なその性格が羨ましい位だった。




「………」



黙っていた元親が目を閉じて。そうか、と漏らした。
そして空を見上げる。




『“守って”“役に立つ”…それが出来て初めて、生きている意味がある』

「!!!」



目を見張って
その視線が途端、落とされる。




「由叉が言った言葉だ。
『俺達にとって』、とな」

「それは…」



顔を上げ元親を見つめて




「私と由叉が昔…信じていた言葉よ」




私達を嫌う者もいれば逆に受け入れてくれる人もいた。
その人達は私達を守ってくれた。
庇って傷を負った人、亡くなった人
―――いまも鮮明に覚えている。





「守られるのが辛かった。
私達は“守り”“役に立てる”側になりたかった」




私達二人の支えとなったのがこの言葉。
生きる糧だった。

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