瀬戸海

松永久秀との戦から一年。
日ノ本は大きな戦もなく、織田、豊臣が名を上げる前の、各地が探り合う、そんな時代に戻っていた。
それは四国も同じ。
平和とは言い切れないが数年ぶりに訪れた穏やかな日々。元親と沙羅が一緒にいる時間は多くなり、彼女と凛も直ぐ打ち解けた。女同士というのもあってか、二人はまるで年の近い姉妹のように語り、笑い合う。





「―――…」




もう一人の実妹に思いを馳せるように。





「由叉…」





―――




「―――…まだ起きてやがったのか」

「元親」




彼が隣りに並んで、同じように空を見上げた。





「どうしても、」




落ち着かなくて、と言葉を切る。
松永との戦以来、力を使っていない為か、顔色はいい。

元親は沙羅の体を気遣い、戦にはめっきり出さなくなった。
松永との戦い、互いに気持ちを知ったあの日から。沙羅はよく元親を頼るようになって。彼女は療養に励むようになった。
今では体調も良好、肩まであった刻印は肘まで引いたのだ。
驚いた、これは好調なのかもしれないと。

冲天千寿がなくなった今、延命の手掛かりはない。

だが元気なのは変わらない。ただ困るのは皆が寝静まった夜、一人部屋を出て物思いに耽る。今のように。




「―――由叉の事か」



どんっ、と座り込み沙羅を見た。
目を細め黙り込む彼女。それは肯定の証。

豊臣との戦で別々に引き離されて以来、彼女とは会っていない。

由叉が見舞いに来てくれたのは元親から聞いた。そして毛利が彼に言った言葉も。



『人は皆駒…我が望むは安芸の繁栄、――それのみよ』




「―――分から…ないの」




どうすればいいか




「……」

「由叉は、」




妹は毛利に助けられ、仕え
彼を好いている





「由叉は今―――…一番幸せなのよ」




私達は幼い頃から様々な偏見を受けてきた。
六条の能力を恐れ忌む者。商売に、戦に利用せんと狙う者。
数え上げればきりがない。
だから人を拒んだ、特に由叉は。
それが私達の内にある殺伐とした闇。



でもそんな由叉が想う程の男(ひと)



嬉しそうに語ったその男(ひと)






「でも毛利元就は…」




長曾我部軍の、元親の宿敵。




ならば私は実の妹と戦わなければならない。




そんな日が来るかもしれない。

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