鬼と風刃
ゴオォッ、
―――即座左右別れて。
迫った3路の炎の道。それをよけると、炎を掻い潜りながら二人は久秀に近付いていく。
「沙羅!」
「馬鹿どもが」
声と同時に久秀の周りに火柱が現れて。
鼻で笑うが、途端眉を寄せた。
ギィン!!
―――火柱を突き破り向かって来た沙羅の刃とかみ合う。それを待っていたかのように、元親は久秀の頭上に現れて。突き刺すように碇槍を降り下ろした。
「…!!」
刹那、彼女を蹴り飛ばし、元親に爆薬を振り撒く。大きな爆発が起こって。
「…元親!!」
咳き込んで起き上がった沙羅。舌打ちをし、退いた彼と合流する。
「無茶しやがって…」
彼女を一瞥し苦笑して。
問題ないと、同じように苦笑して返せば、「そうかい」と返ってくる。
「さぁ、私の時間だ…」
向き直った先に両腕を広げて立っているその男。
抱いていた恐怖は静かに、だがまざまざと心を埋めていく。
「…、」
押し潰されてはいけない。
惑いを悟られてはいけない。
―――隠すようにぐっと構えた、時
ギュ、
「大丈夫だ」
焦らなくていい――。
突然に
強く、震える腕を握り締めてくれて。
はっとして見上げた。
「気負うな」
一人じゃねぇ
「俺が居る」
なぁ、そうだろ
―――真剣な、心強い声に震えは収まっていって。
ありがとう、そう彼だけに聞こえるように呟くと、手は離れていった。
「いいか」
「えぇ」
≪次で決める≫
―――同時に二手に分かれた。
「はは、苛烈、苛烈」
爆撃の嵐を突き進み、元親が得物を振り下ろす。
「…そろそろ頂くとしよう、か―――」
貼り付けた笑みが崩れた。
碇槍を止める刀に振り下ろされた新たなニ刃。火花を散らして。
「らあぁぁぁぁぁあッッ!!!」
「あぁぁぁぁぁぁあッッ!!!」
同時に叫んだ刹那、碇槍は“炎”を、二刀は“風”を纏い
「―――な、に―…」
(これは―――)
大仏殿を飲み込んだ。
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