傷み抉る

飛び散った破片。
折れたそれを見つめて
―――私の中で何かが弾けた。
何故だろう。
一筋の強い、でもとても優しい風を感じたの―――。





「―――…これでいいだろ。
アンタの欲しいものはなくなった」

「何という事を…」




目の前の男は呆然と呟いた。
余程予想外だったのだろう。足元で炎に照らされた破片を拾い上げると
顔を上げて。



「卿も私を失望させるか…ならば仕方あるまい」

「!!」

「刀を持たぬならその娘等、興味はない。
―――死にたまぇ」

「ぐっ…」





再開する攻撃の嵐、広がる炎。
目的を失った怒りの矛先は、後は壊すだけ、その為の凶器と化す。容赦ない刺戟が元親を追い込んでいく。




「壊すのはいとも容易い。
どちらかが壊れた時、残された一人はどのように壊れるのだろうな…
知りたくはないかね?」

「ちっ…悪趣味な野郎だぜ」




当たりかしこをむやみやたらに爆破している所為で、その音しか聞こえない。致命傷を避けながら戦う元親は防戦を余儀なくされていた。




(奴の好きにさせる訳にはいかねぇ)




だがこのままでは埒があかない






(どうすればいい?

俺はどうすれば)






今度こそ
守りきれる?





―――ガンッ!





「守るものが多いというのは大変だな。こんなにも腕を鈍らせる」

「何…?」




刹那、腹部を襲う衝撃。余裕めいた笑みを貼り付けた久秀に蹴り飛ばされる。



「がっは……野郎ォ!」



わざとアバラを狙って…

―――そう冷静に考えて。考えれば防げたのに今になって気付く。
無様にも尻と肘を付いてしまい体制を整える暇を与えず刃がくる。
火花を散らし互いの得物はかみ合った。



「くっ……」

「どうしたのだね、西海の鬼」

「ク、ソ野郎が……」




迷いは、繰り返すのを恐れる自分の弱さか




それとも残された時への焦りか

―――振り下ろされた刀の力は強まり、背は地面に近付いていく。

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