願う程

「…―――来るんじゃねぇ!!!」




途端聞こえたのは彼の声で。
涙で途切れる視界にうっすらと姿が映り、その剣幕に思わず口を噤む。





「ほぉ…立っていられるか、いや感心」




炎の間から垣間見えた光景。
平然とそこに立っていた久秀と静かに耐えるように俯き、立っていた元親。




「よくその程度で済んだものだ」

「はっ、西海の鬼を舐めてくれるなよ。こんぐれぇどうって事ねぇ」

「…!!」



此処から見える彼は汗と泥に塗れてボロボロで。
顔を歪め笑ったけどきっと、大した事ない訳がない。



「…解せんな。
何が卿をそこまでさせる。足掻いたところでその娘の寿命は変わらぬ。
それにその娘は望んでいない。刀で生き延びよう等と」




すっ、と彼が目を細めた




「卿がやろうとしているのは無駄なのだよ。
守って何になる?いずれ死ぬ。分かるかね?
その娘は…愚かにもそのまま死に行く事を選んだのだ。…ならばその願い、叶えてやるのが卿の役割ではないのかね」




何も言えなかった。
否定出来なかった。
それはあの男が言った事は全て有りの侭の真実。

その人がこれから生きていく筈だった未来を奪って私は
私だけが笑って生きていくなんて、出来ないから――――――っ…



…私はこのまま、





待っている、しか…―――





「―――だからどうだってんだ…」

「何?」







それでも彼は




彼は。

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