願い続けた居場所

「黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって…馬鹿げてるだと?
―――ンなモンはな、承知の上なんだよ」



ふと、彼の構えが緩んで



「…沙羅、お前もだ。
これから俺が言う事、しっかり肝に命じておけ」




一瞥した彼は、静かに口を開いた。







「――俺達はな、」







無鉄砲で







むやみやたらに突っ込んでいく







そんな連中よ







昔から、ずっとな…










―――だがよ。
これと決めた事はぜってぇやり遂げる





そういう野郎なんだよ






「アンタの言う通り、確かにこいつの力はとてつもねぇさ」






それだけ、無くしちまってたものも沢山あった




初めて戦に出した時は息を飲んだ






―――凍てつく殺気を張り巡らせ躊躇なく敵を斬り、血を浴び
近付く敵は全て確実に殺していく



松永の言うような殺伐とした面も、見てきた




この力がこいつをそうさせちまったんだろうな
本当は人間味のあるこいつを








殺す事を躊躇して
誰かの為に労わってやれる





そういう女だってのに













――…俺は、



沙羅が苦しむ姿を、見過ぎた






「でもな、こいつは必死に自分の力と向き合って」








豊臣の時には俺達を守りやがった





―――なんだ。



簡単な事じゃねぇか







「――沙羅は俺達の仲間だ。
仲間ってのはなぁ、そいつの強ェモンも弱ェモンも
全部引っ括めて仲間なんだよ」

「アニキの言う通りだぜ!!!」




突然周りを取り囲むのは




「俺達は姐さんの味方だ!!」
「今度は俺達が守るぜ、姐御!」
「松永の野郎には指一本触れさせねぇ!!」

「貴方達…っ」



捕らえられていた仲間。元親と共に来た部下に助けられたのだろう。
更にはそんな部下達も駆け付けてきて、辺りは騒然となった。




「はっ、オメェ等来たのかよ」

「アニキにだけいいカッコさせられないっすよ」

「姐さんは俺達長曾我部軍の姐さんでもあるんすからね」

「ったく…生意気な口叩きやがって」



苦笑した彼が振り返る。
でもその顔には彼らしい、悪戯染みた笑みが浮かんでいて。




「沙羅」





名を呼ばれた







「――此処がお前の“居場所”だ。
俺はもう逃げようったって、放してやれねぇからな。
―――覚悟しとけ」

「……!!!」










瞬きを忘れてしまう位






言葉は響いて、染みて









―――ずっと欲しかった“居場所”






私の“居場所”は
ちゃんと此処に存在してた…―――






「ぅ…っ、」






どうしてだろう、涙が止まらない






気付けば隠せなくなっていた涙

こんなにも私は…









彼を愛してた―――…っ



20111029
20120903改

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