生きていたいのは、

「此処に来たという事は、宝を持ってきたのだろう?」



悠々と歩を進める久秀。
まるで地獄絵図―――屍が揺らめく炎の海を纏い、やってくる男に、六条の宝という言葉に沙羅は息を飲んだ。




「元親…」



私を一瞥すると、直ぐまた前を向いて。
懐から出したのはまさしく




「冲天千寿って言うんだな―――随分と偉い代物を預かっちまったもんだ」




その刀だった。
彼が持ってくれていた。
持ってしまっていたのだ―――

久秀の瞳がぎらつく。




「という事は…卿はもう知っているのかね?
刀は殺した者の命を吸い取ると」





呼応するようにゴオッ、と風が吹いて。
火の海は大きく舞い上がる。





「―――それがアンタの目的、か」




収まった風。
聞こえた彼の声はとても冷静で。久秀はほぉ…と声を上げる。




「驚かないのだな」

「はっ…、今更驚きゃしねぇさ。
―――そんな事だろうと思ってたしよ」




語調は普段と何ら変わらない。
そう思ってでも、何故なのだろう。
少し寂しげに聞こえたのは。
胸が締め付けられるのは。




どうして―――…




「その刀があれば私は、より多くの宝を愛でる事が出来る。
見る事のなかった宝物を手にし…飽く事無き時間を手に出来る」



―――ザッ、




「欲しいのだよ」





近付く久秀。






「さぁ…渡したまえ、その刀を」





見て分かる




その目は先程までとは違って






狂気を一層膨らませた目





元親なんて見ていない




宝刀だけを映した目だと





「……っ、」






怖い





何が起ころうとしているのか
予想がついて







彼をまた巻き込んでしまうのが






目に見えて―――ザ!!!


「沙羅!!」

「!!!」






彼の元へ動いた足。彼の声で止まって。






「俺を、信じろ―――」





守らなきゃいけないと思ってた





守ろうと思って






いつも先に守ってくれるのは






支えになってくれるのは貴方だから







益々愛しくなって









―――ずっと…傍で生きていたいって思ってしまう。

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