大きな背中。
今までずっと見つめてきた貴方の背中。視界一杯に広がって。



「待ち侘びたよ、西海の鬼」



キリキリと刃の擦れ合う音が響く。
元親は表情一つ変えずに、黙って睨み付ける。




―――グ




刹那、私を片腕に抱え





―――ドォォォォォン!!!





大きく飛び退いて。
一瞬目が眩む程の光に続いて、爆発が私達の後を追ってくる。



「……っ、」



止まらない爆発、破片の雨。次々と爆破する足元。
だが一つも巻き込まれる事なく彼はひたすら走り続けていた。





「―――掴まってろ」



そう呟くと、鎖を大仏殿の屋根に引っ掛けて。




「っっ!!」



グンッ、と体が大きく揺さぶられる。
地面から宙へと離れる体。思わず目を瞑り、伸ばした腕は彼の首に絡めていた。
強く、しがみ付いていた。

すると彼が笑ってくれた気がして。
腕の力が強くなった。
―――地面に降り、そのまま壁際まで離れると下ろされて。
私を覆い隠すように離れない。
そして右横に手が置かれて。



「…なんて顔してやがる」



見つめるしか出来なかった私の涙をもう一方の手が、指先が払ってくれる。





ずっと会いたかった





声を聞きたかった





貴方の姿を見たかった







会えて嬉しくて








言葉にならなかった










―――でも涙だけは素直に気持ちを表していたの






「あっ……」



背を向け戦場に戻っていく彼。
追うように一歩踏み出した足。




「大丈夫だ」



足を止め、振り向いた彼は目を細め微笑して。




「野郎共から話は聞いた。
お前は十分“守った”。
―――――いいじゃねぇか、後は俺にやらせろよ」




そう言うと再び背を向けて






「そこで見てろ―――沙羅」




前に向き直る。芯の通った声。
乱暴な言葉とは裏腹の優しさ、彼らしさ。

少し離れた背中は私を守るように立ち塞がる。





「―――…卿なら必ず来ると思っていた、西海の鬼」



晴れていく煙。
聞こえた声に、はっとして。その中から徐々に姿が現れる。
元親は得物を担ぎ黙って目を細めた。

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