嘲笑

「私を受け入れてくれてありがとう」





私の力は私の居場所を壊すものかもしれない。
それでも私はこれからも、
ずっと…此処に在り続けたい。





「居続けたい…、だから」





ふっ、と微笑んで。





「守らせて欲しい―――私の手で…」





この力が“居場所”を危険に晒してしまうものなら
逆にその力で守れないだろうか。
“壊す力”じゃなく
“守る力”に出来ないだろうか―――…





「姐さん…」

「姐御……っ、」





子供のように泣き出しそうな仲間を優しい眼差しが包む。
沙羅は久秀に向き直った。



「いやはや実に、感動的な忠誠心と言えようか。
これは素晴らしい舞を拝見出来そうだ…」

「一つ私からも条件がある」

「ほぉ…何だね」

「―――私が負けたとしても」





仲間は解放して





「長曾我部軍には、」








元親には









「手を出さないで」

「…約束しよう」





満足そうに応えた目の前の男。すると久秀の部下が手枷を外して。刀を2本渡される。
広い庭の真ん中に行けと急かされた。
「姐さん…」「早まらねえでくれ」と、背中に掛かる声に泣いてしまいそうだった。
だが今泣いたら全て水の泡。
彼らをこれ以上危険に晒せない、晒したくない。

そう思えば心は落ち着いてきて。近づいてくる足音もすっと耳に入ってくる。
直ぐに辺りは目をぎらつかせた敵で溢れて。鞘から刀が引き抜かれる音、刃が擦れ合う音が響き合う。





「松永久秀」




広間から悠然と見下ろす男を、睨みつけた。





貴方の好きにはさせない

―――すっ、と視線を目の前に戻して。
氷のような眼差し。相手に突き刺さる。
それが合図。





「さぁ、一興だ。
―――私を楽しませてくれたまぇ」

「はあぁッ!!!」




勢いよく駆け出した沙羅に




「―――残るのが絶望だけだと気付いた特、卿が私の前に跪くのが楽しみで仕方がないよ…」





薄く笑い、呟いた言葉は届いていなかった。



20111012
20120902改

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