一瞬の期待
「アニキーーーーー!!今回は大量でしたね!」
「そうだな」
四国へと帰路を辿る長會我部軍。今回はどうにも海にいる時間が長くなってしまった。
「今回もいい働きぶりだったぜ?
ゆっくり休め!暫くは陸に戻るからよ」
長引いたのには訳があった。
この頃とある船が瀬戸海を荒し回っていたのだ。その連中は少し骨のある奴らだった。
頭はそこそこ頭の切れる男だったが、力で手下を牛耳っているような奴だった。
その男を討ち、騒めく手下共に元親はこう言った。
『…アンタ等、俺と一緒に来ねぇか?』
縛り付ける者はもういない。
俺達の船でもっと自由に生きていかねぇか?
一瞬の迷い。
俺達を殺さねぇのか?あんたの敵だったんだぞ?
そう口々に唱えていたが、最後には元親の度量が敵を仲間に引き入れたのだった―――。
「―――…そういうアニキはホントは沙羅姐さんに会いたくて仕方ないんすよね!」
「アニキの頭の中は第一に姐さん、第二に姐さん、第三に姐さん…」
「って、姐さんしかいねぇ!」
「「「あっはっはっは!!」」」
「ったく、オメェ等は…」
案外まんざらでもない故に、ガシガシと頭を掻いて。騒めく甲板の上をぐるりと見渡す。
「―――うっし!
新しく仲間が増えた祝いも込めて、陸に戻ったら一杯やろうじゃねぇか」
「流石アニキイィ!!!」
「姐さんも目を覚ましてるかもしれませんしね!」
「あぁ」
スッ、と目を細め笑った元親、その銀髪は海風に戦(そよ)いでいた。
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