姉妹
ザァ…
風が吹き抜ける。
「そんな身構えないで欲しい…」
俺は一人だ、そう言って元親の目を真っ直ぐ見て。
「毛利に仕えてるのか」
「…そうだよ」
「―――そうか」
目を閉じた元親。再び開いた瞳はすっと、細む。
此処に来たのは
「毛利の命か?」
「!!」
目を見開く彼女。だが直ぐにその目を伏せ
「…違うよ」
静かに首を横に振る。そして目線は開いた襖にいく。
「ただ…姉さんに会いに来た。
俺の独断だけど、」
ずっと心配だった―――。
「…」
短く告げられた言葉。そこから伝わってきた。心からの不安、姉を気遣う気持ち。
こいつは毛利とは違う。感情を持って自分の意思で来た。十分な理由だった。
「―――こっち来な」
「えっ?」
「奴に黙ってわざわざこの四国まできたんだろ?こいつの為に。
―――姉貴思いのいい奴じゃねぇか、アンタ」
そう言うと近づいていって。
「こんなところでぼーっと突っ立ってたってきりねぇぞ。
…いいから上がっていきな」
―――
「由叉つったか、アンタ」
不意に名前を呼ばれびくっとした。
姉の寝ている横で何も考えず、ただその顔を眺めていた。隣の男の聞き慣れない声に、ここまで驚いてしまう程に。
「う、うん…そうだけど西海の鬼、どうして俺の名を?」
「ん?あぁ、沙羅から聞いた事があってな。
―――あと元親でいい。堅っ苦しいのはなしだ」
「!!そんな俺は敵―――」
「んな事今は関係ねえだろうが。沙羅が心配なのは同じだろ?」
「…!」
返す言葉を失ったのか黙りこくってしまう由叉に、ふっと笑う。
「――やっぱ…流石だね」
あぁ?、と返す元親に目を細めふっと笑って。
「―――聞かせてよ!宗爺…宗定は部下だったんだろ?
―――俺、あの人の事もっと知りたいんだ」
にっこり笑ったかと思えば、真剣な、だが何処か影の見え隠れする表情をする。重なる沙羅の姿。六条の生き残り――由叉も何か抱えているのだろう。そう感じた。
「あぁ、いいぜ―――…」
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