貴方の光を

―――…



半兵衛をゆっくりと寝かせる。

持っていた包帯で口元の血を指で拭って。



「――――…」



ふと、その手が止まり、沙羅の目が細まる。





「…―――――私も貴方を…」





他人と思えなかった





「貴方の姿、まるで私を見ているようだった」





病に犯される体、生きれば生きる程大きく代償を受ける――寿命を削る体。

私は元親の為に
貴方は秀吉の為に




「………――」



私も貴方も
“守りたい”という気持ちは
“役に立ちたい”という気持ちは同じ筈、なのに




「これしかなかったの…?」




戦―――戦国の世に生まれた運命。
だが違う形で出会っていれば、殺め合う事はなかったのではないか。




「戦でしか…」




人を殺めて、傷付ける。
それでしか、犠牲を払わなければ。
平和な世は作れないの―ド

「…っっ!!」



息が出来なかった。瓦屋根に倒れ込む。一瞬にして全身にまとわりつく汗。
視界が霞んで。



(あぁ…もう)



「限界…」



動かない体。遠退いていく五感。
滲む空、日の光。



(……終わったのね……)



始まった地響きは次第に大きくなっていく。あちらも終わりを迎えたのだろう。
パラパラと崩れていく城、破片が屋根を転がっていく。




(―――…)




何故だろう、怖くない。
とても気持ちが落ち着いていて




「私は――…」




気付いたらこんなに…生きようとしてた





「貴方の…」




お陰ね

―――閉じかける目蓋の裏に揺らめく彼の背。





心残り、あるとしたら
もう少し




(貴方と居たかった…)




ありがとうって言いたかった




元親…―――――。



20110529
20120902改

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