反撃

「DEATH FANG!!」
「火焔車!!」
「らァッ!!」




爆風と飛び交う叫び声。本来の力を十分に発揮できる程回復した3人の勢いは、止まらない。少し前までの戦いとは打って変わって、動きにキレも速さも戻っていた。
目の前の覇王と互角、いやそれ以上の力で渡り合っている。




「猪口才な…若造が!!」




グンッと肩に迫る大きな手を、体を後ろに反って元親は避ける。



(危ねぇ…)



崩れた体勢を整え、距離をとる。人数では断然元親達が有利だ。だからといって、相手を見くびってはいけない。
相手は覇王――豊臣秀吉。素手で簡単に人の肩など砕く程の豪腕の持ち主。

先ほど戦い、戦い方は分かった。

元親も並外れた豪腕の持ち主だが、秀吉の前では赤子同然。例え3人といえど、あの手に捕まったら終わりなのだ。




「烈っ火ァ!!」



その時だった。秀吉の背後――宙に陣取った幸村の渾身の一撃が直撃する。



「ぐぅ……!」

「War―――
Dance!!」



僅かに緩んだ秀吉の隙を政宗は見逃さず攻撃を食らわせる。見事な連携だった。


「愚かな!!!」

「!!!」




迫り来た拳を、十字に構えた六双で防ぐ。と、再び間合いを取って。




「3人集まったところでこの程度か。一人一人の力の底が知れよう」

「Ha!ごちゃごちゃ言う割に息が上がってんじゃねぇか。テメェの力も知れたもんだな」

「お館様の天下の為、貴殿には此処で倒れて頂く!」

「はっは、おもしれぇ事言ってくれんじゃねぇか、真田。だがな、天下を頂くのはこの俺よ!」



それぞれ秀吉と距離を離し声を上げる。政宗と幸村の決定的な攻撃は秀吉の鎧を砕く事が出来た。今までの戦いで秀吉自身も体力が削られている筈なのだ。
勝てる、このまま行けば。ようやく長かった夜が明ける――。
そう思い始めていたのは元親だけではないだろう。




「――らあぁっ!!」
「うおぉぉぉっ!!」
「おおりゃあぁぁ!!」




3人同時に地を蹴る。乱れ狂う刄と拳。それは何度も何度も、繰り返し止まらない。
双方譲らない攻撃。例え攻撃を受けても何度だって立ち上がる。初めてとは思えない連携攻撃が、秀吉を追い込んでいく。




『オメェ…っ!!!』



戦いの最中
ふと頭の中を擦った。



(集中しろ…―――)



いくら思い出すなと言い聞かせても、自分の手に残る感触、鮮紅。



(……っ、)




手は、沙羅の血で真っ赤だった



あいつの傷は治り切ってなかった。俺達の傷は完治したが、あいつの背中は塞がり切ってねぇ、今も。

あれはどう見たって致命傷だった。治せるってんなら当たり前に俺は、お前自身も治したと思った。
俺達の誰よりも、一番にお前が治らなきゃならなかったってのに。



ギリッ…



どうしてお前はそうやって



『でも分かってほしい、これが私の最善の策』



自分を大切にしねぇ…っ



「――おりゃあぁっ!!」



力一杯碇槍を凪ぎ払う。
独眼竜と真田、この2人が加わって状況は有利になった。遅かれ早かれ覇王との決着は着くと確信していた。

だからこそ、気掛かりなのは彼女だった。傷を背負いながら、寿命を減らし続ける好いた女。



「くっそ……っ、」




俺が行くまで




死ぬな沙羅―――!!

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