礎上の賭け

「沙羅殿!!良かったで御座るあぁぁぁ!!」

「沙羅、お前大丈夫なのか?あの傷……」




涙を拭う幸村とは対照的に、政宗は眉を寄せ口籠もる。元親も同じだった。

抱き締めたままの彼女の背、自分の手が触れるそこは破けた服と、冷たい感触。
湿っぽいなんて優しい言葉で片付けられない、血濡れたままの――。




「オメェ…!!」



思わず張り上げかけた声。でもそれは、自分の両肩を押した彼女に遮られて。顔を下げたまま沙羅は首を横に振った。





「その先を…言わないで、元親」



今は、言ってはいけない



貴方だって分かっているでしょう



―――ゆっくり顔を上げ、元親を見て微笑む。



「…ッ、」

「大丈夫――、もう立てるか「手ぇ貸せ」



自力で立ち上がろうとした彼女の手を無理矢理取って共に立ち上がる。
沙羅が表情を緩め、ありがとうと言って。
やり場の無い怒りを喉の奥で必死に噛み締めた。
顔を背け、拳が震える。刹那だった。





――ドオォォォォン!!!


「「「!!」」」

「…っ」




擘(つんざ)くような轟音。渦の中にこだまして、空気が一瞬震える。
これは秀吉が渦を殴っているのだろう。



(時間が無い…――)




くっと眉を寄せる沙羅。真剣な面持ちで3人に向き直る。



「皆聞いてほしい」






「これから私が言う事を――…」









―――







「この渦は私の力で起こした―――もう2人は気付いているでしょう?」



政宗と幸村を見つめ言う。短く返事を返した2人は真剣で。
話が分かる人達で良かった。




「貴方達の傷も私が治した。
豊臣ともう一度戦う為に」

「!!沙羅殿が…!」

「……」



幸村が目を瞬き信じられないという風に言葉を洩らす。一方の政宗は目を細め沙羅を見つめたまま。




「勝手な事をした。
でも分かってほしい、これが私の最善の策。貴方達でなければ覇王を倒せない」



他でもない、貴方達3人の力でなければ―――



「貴方達が万全な状態であれば絶対に倒せる。
…この渦も長くは保たない。政宗、幸村、元親―――貴方達に「OK」



一番に名乗りを上げたのは政宗。



「――要は俺達に奴を任せるって事だろ?指図されるとはな」

「……」

「まぁ体を軽くしてもらった以上、受けてやるしかねぇか」



首の骨を鳴らす政宗。




「俺と真田幸村、西海の鬼――先に秀吉の首を取れるのが誰か教えてやる、you see?」

「…頼もしいわ」

「某とて同じ、沙羅殿の力を無駄にはせぬ!必ずや秀吉を討ち果たしてみせましょうぞ」

「ありがとう」



今だけでも味方でよかった。二人を見て思う。
だが対照的に表情が険しいのは元親だった。

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