温もりと光を
「今度は何だってんだ…」
突然元親と沙羅を取り囲むよう、現れた大渦。抱き起こした彼女の体を腕の中に庇いながら見上げる。
まるで自分達を守るような、分厚い渦。だが吹き上がる風は今までと違って優しい。
「一体―――スッ、
言葉が途切れる。目を見張った。
手が、腕に伸びたから。
優しく添えられたから。
「…生きて、んのか」
沙羅
「聞こえてんのか…?
―――…聞こえてんなら返事しろ!!沙羅ッ!!」
「―――…西海の鬼!!」
「長曾我部殿!!」
「!、独眼竜に真
――――田…」
フワッ…
―――視線が戻る。同じく渦の中にいた2人に驚いたが、突然彼女の体が淡く光って。同時に吹き上がっていた風が、波が引いては寄せるようにゆっくりと揺れ動く。そして、
「!!――傷が」
政宗がはっとして首を傾ける。体の傷が、疲労が次第に癒えていく。まるでこの、波のような風に吸い取られるように。
「斯様な事が…」
幸村も信じられないといった様子で自分の腕を見つめる。
傷を癒す、これは治癒。それも瞬間的。
元親は2人を一瞥すると、沙羅を見て目を細める。癒えていく傷、疲労。温かい光を受けながら呼んだ。
「沙羅」
腕の中の彼女を。
声に同調するように消えていく輝き。そして目蓋が僅かに震え、後に覗いたのは
「元…親――…」
瑠璃色の瞳。
まだ重たそうだが、しっかりと垣間見えた。澄んだ海の色。
刹那抱き締めていた。彼女を。
「馬鹿野郎が………!!」
その声色は彼らしくもない、とても切なくて。
思わず目を見開いた。が、直ぐに細くなりゆっくり閉じる。彼の肩口に顔を埋めた。
「ごめんなさい――…」
もう何度目だろう。
でもこれが私の、私に出来る精一杯の気持ちだった。
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