崩れる刻限

同時刻――


(――風が、)



止んできた。

―――様子見していた政宗と幸村。起こった現象に目の色を変える。中で何かあった。そう確信して。
大渦がゆっくりと収まり始め、吹き飛び消えた。




「政宗殿!」

「あぁ、――乗り込むぜ真田幸村!!」



頷く幸村。同時に天守閣へ駆け上がった。






「―――…!!」





言葉を失った。
遠く瞳に映ったのは、床に臥した沙羅。
そして彼女を抱き起こし呼び続ける元親。
此処からでも見えた。彼女の背が、見る見る紅く染まっていくのが。





―――




(こんな、筈じゃ…)



倒れた沙羅を見下ろしながら半兵衛は一歩後退る。
想定外だ。僕は『待機』と命令した。
元親君は彼女を傷付けられない。
そして彼女は僕の命に忠実に従う兵。豊臣の、この戦にとって大きな戦力。、
君の心は読めていたのに、




(…どうしてこうなった?)




僕の命に従うしか出来ない筈。あの小太刀を持つ者には逆らえないのが、六条の血。
なのに、




(どうして君はそこに居る?)





どうして





「くっ……、」



唇を噛み締めた。途端にはっと目を見開いて。大きく後ろへ、下方の瓦屋根まで退く。
まるで自分達を追い出すように大渦が表れたのだ。
元親と沙羅を包み隠す。



「くっ…!!秀吉!!」




凄まじい風に顔を上げられない。聴覚を埋め尽くす激しい風。状況が把握出来なかった。
やっとの事で横に視線を遣ると、遠く同じ屋根に秀吉がいた。

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