眠りから覚めて

ギュッ……――




その時だった。触れた、強ェ圧を、強く抱き締める圧を感じたのは。
その勢いに思わず座り込んだ。




「なっ……」





そいつは





「お前………!」





紛れもねぇ






「沙羅」




俺の知るあいつだった。
澄んだ瑠璃色を宿すあいつだった。
目には光が戻っていて。





「元……、親…」





首に回された腕の力が強くなる。
見上げてきた顔が、瞳が涙で溢れていて。
その白い手が、そっと頬に伸びた。






「本当に……」





ゥ…―――








「ごめん…、なさい……」





ぽたっ…、と落ちる雫。
―――刹那だった。



ズル…

―――頬に添えられていた手。それが滑り落ち同時に、横にぶれる姿。
体を、首を滑り落ちる体温。
靡く髪。



ドサ…―――

その音で初めて何が起こったのか分かった。
倒れた彼女の背を走る大きな刀傷。
そこから次第に服を染めていく、紅。
同調するように消えていく渦、風。




「おい…沙羅、」






呟くように言伝(ことづ)さんだ言葉は





「目ぇ覚ませッッ!!!沙羅ーーッッ!!!」





小さく消えて。
――沙羅は元親を庇い、斬られたのだった。



20110327
20120830改

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