声を、
「無様だね元親君」
視線の先、半兵衛の瞳が静かに細くなる。
「…まだ、だ」
黙ってこちらを見据える赤い瞳を睨み付け元親は鎖を引っ張った。得物を手に取ると体を持ち上げ立ち上がる。髪が乱れ、目元に頬に何本も垂れ下がる。
「はッ……は…」
「この期に及んでまだ抗か」
覇王の様子は変わらなかった。立ち上がる元親を見ても毅然と見据える。秀吉の近くに半兵衛が近づいていった。
「君も諦めの悪い男だね。もう十分理解しただろう?
圧倒的な力の前には情など無意味だ」
「孤島の鬼よ、貴様も口だけの輩よ。
無謀な戦を挑み、事実今もこうして我の前に立つ事すら叶わぬ。
弱く小さき命、いまここで差し出しこの国の礎となるがよい」
「はっ…、テメェらにくれてやるモンは…何もねぇ、よ」
息を上げながらふっと不敵に笑う。
ふらふらと揺れながら歩き出す。
「海賊ってのはな…」
『…どうしたの元親、』
「一度手に入れたモンは…ぜってぇ渡さねぇ」
『ありがとう、元親』
「取られたら奪い返す……こいつは譲れねぇ」
ぴた、と歩みを止めて
「だから、そいつは返してもらうぜ」
たとえそれが
「無謀でもな…
そいつが海賊の流儀だ!!!」
「「!!」」
半兵衛と秀吉は僅かに目の色を変えて。
突然構えを変えた元親。懐に突っ込んだままの左手を得物に添え、ゆっくりと足を早める。
「喰らえるモンならこの鬼…―――」
バッ、と飛び上がって
「喰らってみやがれ!!!」
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