風に散る
ゴッ―――…
振り下ろした大きな得物。それは鈍い音と、小さな火花を散らして止まる。
キリキリと金属が擦れ合う音を出しながら片手で、鎧で固めた片腕で容易く止められた。
「なっ……」
「その程度の力で――」
ドッッ!!
突如腹部をとてつもない衝撃が襲って。重い碇槍を受け止めたまま、秀吉は元親に渾身の蹴りを食らわせた。
「がはッ……―――」
声にならなかった。そのまま体は天守閣を、瓦屋根を突き破り碇槍ごと空に打ち上げられる。それを追うように跳躍し次の瞬間秀吉は元親の傍らに現れた。
「我は倒せぬ!!!」
ゴッ!!、と拳が宙に浮いていた元親の胸元に降り掛かる。浮いていた体が勢いよく天守へと撃ち落とされて。
凄まじい破壊音が渦の中に響き渡り、瞬間風が沸き起こって。半兵衛と沙羅の髪が強く靡いた。
―――ピク、
―――刹那、僅かに動いた指先。
晴れてきた城の中、沙羅の目がゆっくりと大きくなる。床にめり込み動かない元親が、鮮明に映り始めていた。
続
20110322
20120830改
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