譲れない想い

「がっ、テメェッ…」



余る左腕を懐から出し、腕を引き剥がそうと掴む。だが、何も変わらない。藻掻く元親を金棒でも扱うように大きく上段に振りかぶると、そのまま力任せに床へと振り下ろした。
床板が砕け、城が壊れるのではないかという位破壊音が響く。



「っ…ぐぁ…、」

「勝てぬ戦を挑んだ貴様に」



床に沈む元親を持ち上げて



「覇王たる我は倒せぬ!!」



声を張り上げた。同時に力任せに振り投げられる。



ズドオオオオ!!

―――城の壁が衝撃で崩れ落ちて。
辛うじて外に貫通はしなかったが瓦礫の山に倒れ込む。力を振り絞って体を起こした。



「がはっ…げほ
―――…野郎!!」



息を整えるのに必死で。しくじった。気付けなかったなど。



「これが覇王たる我とお前との差だ」



砂埃の中聞こえる声。



「情など…、愛など所詮はまがい物。
弱き故にかたち無き幻想を求め縋(すが)ろうとする。
自分の弱さを紛らわそうとする。
そんな弱さを持つ者に、強き国を作れる筈がない。
弱き貴様が、我が命を奪える筈もない」

「…うるせぇ」

「愛は枷となり弱さを生み思考の冷静さを失わせ、相手と自分の力量差まで混同させる。
仕舞いには自分の身を滅ぼし、」



国を滅ぼす



「黙れつってんだろうがぁぁあッ!!!」



張り上げた怒声。
空気が震えた。




「情が、愛がまがい物だ?人を弱くする?
――上等じゃねぇか」




額から流れる一筋の血。肩を竦め笑った。





「俺のまわりにはな…、沢山の奴らがいる」





『アニキィィィ!!!』
『長曾我部のお頭!』
『元親様』







「四国の民や、」






『―――元親、』







「沙羅、」







沢山の思いを見てきた






「…そいつらが喜ぶ顔を見たくてな。
俺は天下を目指す」



ガラガラと瓦礫が崩れ、立ち上がる。




「感情ってモンがねぇで、何の為に生きようってんだ?
――テメェ等の造ろうとしてる国には笑って暮らせる奴が一人も居ねぇんだよ!!」



首を振って吐き捨てた。



「強ぇ国だと?はっ!
何の情も持たねぇ兵で何が出来る!?守りてぇモンを知らねぇ兵じゃ誰にも立ち向かう事なんざ出来ねぇっっ!!!」



刹那碇槍に飛び乗る、弩九。ぐっと鎖を握り秀吉めがけて向かっていく。
ぐるんと体を反転させ、得物を秀吉の頭上で振り下ろした。




「テメェに天下はやらねェエッ!!!」


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