迫る焦り
「貴様の弱さよ、長曾我部元親」
「…秀吉」
吹き荒れる風の中。姿を現したのは豊臣秀吉。奴は天守閣に着いた時と全く変らない様子で。半兵衛の傍で歩みを止めた。
(独眼竜と真田は――!?)
あいつら、がいねぇ
まさか戦られた…のか―――?
眉を寄せる元親に気付いた半兵衛は微笑を向ける。
「独眼竜と幸村君なら、」
すっ、と視線を秀吉に向けて。
「我が拳で城外に殴り飛ばしてやったわ」
滅茶苦茶だ、そう思った。あの独眼竜と真田を素手で…力押しで退けた、だと?――
「はっ、どうにかしてやがる…」
「今彼らに水を差されると面倒だから、ね」
言った途端、沙羅が半兵衛の傍らに身を引き返す。
(……っ、沙羅――)
「――…まずは君からだ、元親君」
豊臣に、彼女にとって今一番厄介な君を
「―――俺と張ろうってのかい」
ぐっと目を細め、一歩足をずり下げる。得物を構え直した。
同調して秀吉も構える。
「貴様のその小さき情が国を滅ぼすと、その身で思い知れ」
西海の鬼よ
続
20110310
20120830改
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