擦れ始めた想い

「…」



自分が入ったのとほぼ同時に大きな音がしたと思ったら、傍の窓から見えるのは重い灰色の景色。辺りから聞こえる音、城内に吹き返す風。この天守閣が巨大な渦のど真ん中にある事を知る。
一瞥し確認した時だった。





「―――まんまとやってくれたね、元親君」

「!!」



向けた視線の先、四方八方から吹き込む風を受けながら半兵衛が歩いてくる。



「テメェ……」



ハッ、として。
俺と奴の間には床に座り込み、深く頭を下げたまま動かない沙羅がいた。
半兵衛は素早く刀を抜いて。彼女に向かって関節剣を振り下ろす。




「避けろ沙羅!!」

「…」

「ちっ!」




パキパキと分かれた関節剣は鞭のように進み、物凄い勢いで差し迫る。
刃が届く寸前、彼女を抱き込みよけた。大きく距離を離し、反応しない沙羅を座らせこちらに向かせる。



「おい、お前一体どうしャ、



口を噤(つぐ)んだ。
ごおごおと吹き荒れる風。
二人の髪を、服を揺らして。

喉に食い込む冷えた感触。
唖然とした。
見つめるのは、意志と光を宿さない瞳。




――元親は沙羅に刀を突き付けられていた。



20110306
20120829改

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