背負うもの

意味が分からなかった。沙羅が叫んだ時一体何が起きたのか。
目をかっ開いて見た時、俺の体は既に城外だった。



「なっ――…」



尋常じゃない風。このままだと落ちる。咄嗟に鎖を天守閣の端へと引っ掛けて。
途端に風が止み、天守閣に飛び込んだ。






―――







同時刻、政宗と幸村も突然起こった強風に手を止めていた。



「――What?」

「これは一体…!!」



立っている事すらままならない。歩くどころか後退していた。顔を腕で覆う。



(あっちは西海の鬼とあの仮面の男の…)



そう思考を巡らせていたら前方の影に気付くのが遅れた。



ぐっ!!」

「政宗殿――ぬぉッッ!!」




だが覇王にはこの程度、何の障害でもない。秀吉は一瞬で移動し政宗の頭部をむんずと掴み取って。そのまま幸村目がけて力任せに投げ付けた。壁が砕け二人は城外へ吹っ飛ぶ。
なくなった風のお陰で体勢を立て直し、下方の屋根に着地した二人だったが。
まるで外部からの妨害を断絶するよう、巨大な渦が天守を覆い隠したのだ。



((何だこれは…――)) 



「――MAGNUMッ!!!」
「――ぬぉぉぉぉっっ!!!」




瞬時に得物を振るう。
しかし渦は割れるどころか政宗と幸村を弾き返す。




「朱雀…!!「止めとけ、真田幸村」



走り出す幸村に冷静な声が飛んだ。



「何を申されるか政宗殿!!
中にはまだ…!」


「豊臣秀吉と竹中半兵衛がいる」



そしておそらく



「―――目的は沙羅か」

「沙羅殿…」

「俺達は追い出されたらしいな」



おそらく中には




「―――西海の鬼もいる」



天守を見上げた。
見るとこの渦、空まで突き上げている。そう簡単には突破出来ない。出来る事は出来るだろうが少し時間が掛かりそうだ。



「――真田幸村。ここは一時様子見だ。
中の決着が着いたら何かしら起こるだろ」

「何を悠長な事を!!臆したか伊達政宗!!
長曾我部殿達を見殺しにすると申すのか!?」

「臆しただと?
Ha!!No Kidding!!
見殺しも何も天下取りにしてみりゃ元から敵同士。アンタも俺も偶々この日この時に鉢合わせたってだけだ」

「なればそれを利用せん事はあるまい!!今は豊臣に相対する者が多い程有利、豊臣を討たぬ限り我等も天下どころではなかろう!!」

「Shut Up!!!」



バチッ、と空気が震える。ずかずかと幸村の方に歩いていくと、ぐいっ、と六文銭を引っ張り上げる。



「言いたい放題言いやがって…少しはCool downしな!見殺しも何も奴が豊臣を落とせねぇ時はその程度だったってだけだ。
城主ってのはな、国を背負って来てる。てめぇみてぇに替えが効かねぇんだよ!!」


「!!」



幸村がはっとする。



「俺は覇王を倒しに来た」




テメェの目的を忘れるな、真田幸村



―――ばっ、と手を離し背を向ける政宗。その背と、渦を交互に見、唇を噛み締める。
覇王はそう簡単に討ち取れる相手じゃない。確実に倒さねばならないのだ。



「そんな時間は掛からねぇだろうな、何時でも戦れる準備はしとけよ…you see?」



そう言って政宗は目を細めた。





さぁ、アンタはどうでる
西海の鬼――…

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