目覚めの刻

「――っっ!!」



不意に沙羅の体がビクン、と震えた。苦しそうに蹲(うずくま)る。
視線の先を見れば。



「…!!お前肩から血が」



(竹中から離れる時やられたのか―――)



刻印を裂くように肩口に出来た刀傷。




「…ちっ、くそ」



血を止めようと傷を押さえる。
それでも止まらない鮮やかな紅。



「大丈夫よ…元親…
これ位、どうって事…ない…」



そう言って元親の手にそっと手を置く。
その時だった。
急に彼女の体が強ばる。



「おい、どうした…」



自分の腕の中、目の前に居る彼女は明らかに普通じゃない。目を見開いたまま、置かれた手が震えていた。



「…沙羅どうした!?沙羅ッ!!
くそ!!どうなってやがる!?」



こいつの中で何か起きてる。
でも何なのか分からなくて。








(――元、親)



霞む視界。薄れる貴方。
知らない力だった。暗く重い力。巨大なものに抵抗も出来ず、意識が飲み込まれていく。




い、や





クン、






もう貴方を






ドン、






巻き込みたくない







「逃げ、て…元親、」

「馬鹿言ってんじゃねぇ!!
オメェを置いて行ける訳ねぇだろうが!!」



そう言っている間に砂埃が晴れていく。




このままじゃ




「……ッ…、」





貴方を傷付けてしまう







「―――私から離れてぇえッ!!!元親ァアッ!!!」

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